研究実績の概要 |
神経終末部にシナプスリボンという共通構造を有する、蝸牛の有毛細胞および網膜の双極細胞での神経伝達物質・グルタミン酸の開口放出動態をグルタミン酸イメージングで比較検討し、聴覚と視覚の情報処理基盤メカニズムを解明する。また、有毛細胞や双極細胞のシナプスリボンをノックアウトした際の効果を解析する。これらの実験により、「蝸牛および網膜において、シナプスリボンはグルタミン酸の開口放出を制御し応答の多様性を作り出すのに寄与する」という仮説を検証する。 平成29年度研究計画:①野生型マウス網膜より双極細胞単離標本を作製し(Tachibana, 1981)、グルタミン酸イメージングを実施する(CtBP結合ペプチドを細胞内に導入し、シナプスリボンの様態も確認する)。②同一双極細胞内にある各シナプス間での神経伝達物質放出の多様性について解析する。 平成29年度研究成果:①野生型マウス網膜および金魚網膜より双極細胞単離標本を作製し、グルタミン酸プローブ導入実験を行った。②先行研究(Francis AA et al. J Neurophysiol.106:1028-1037. 2011.)を参考にCtBP結合ペプチドを作製した。③聴覚中枢・Calyx of Heldの神経終末端にNMDA型グルタミン酸受容体が発現し、その活性化が電位依存性Caチャネルを抑制し神経伝達物質放出を減少させるという現象を見出し国際誌に論文を発表した(Oshima-Takago & Takago, Open Biol. 7. pii:170032, 2017)。④聴覚系のイオンチャネル型グルタミン酸受容体に関する総説を聴覚研究専門誌に発表した(Takago & Oshima-Takago, Hear Res. 362:1-13, 2018)。
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