研究課題
神経終末部にシナプスリボンという共通構造を有する、蝸牛有毛細胞および網膜双極細胞での神経伝達物質・グルタミン酸の開口放出動態を、感覚器細胞を用いての実験に最適化したグルタミン酸イメージングにより比較検討し、聴覚と視覚の情報処理基盤メカニズムを解明する。また、シナプスリボンの有無でグルタミン酸放出の様相に違いが生じるのか検討する。これらの実験により、「蝸牛および網膜において、シナプスリボンはグルタミン酸の開口放出を制御し応答の多様性を作り出すのに寄与する」という仮説を検証する。平成31年(令和元年)度研究成果: ①金魚網膜双極細胞からのグルタミン酸イメージングのフレームレートを軸索終末部全体の記録で200 Hzまで改善できた。終末部の一部、数個のシナプスリボンのみに対象を絞ったイメージングでは、800 Hzでの記録も可能であった。②グルタミン酸イメージングで観察された個々のリボンシナプスにおけるグルタミン酸シグナルの多様性がカルシウムシグナルでも認められるのか検証し、カルシウムシグナルでも同様の多様性を認めた。③脱分極刺激に対するグルタミン酸の持続性放出がシナプスリボン近傍とシナプスリボンから離れた部位のいずれからも生じ得ることを示唆するデータを得た。④グルタミン酸の自発的放出に関しては、主としてシナプスリボンから離れた位置で生じていることを示唆するデータを得た。⑤国際学会(Ribbon Synapses Symposium 2019)にて研究成果を発表し、ポスター賞を受賞した。
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