研究課題/領域番号 |
16K18378
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
藤本 久貴 川崎医科大学, 医学部, 講師 (50624227)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抑制性 / 興奮性 / 生理的聴覚形成後の生後発達 / 下丘 |
研究実績の概要 |
聴覚領域の神経回路ネットワークについて,マウス下丘を用いて詳細に解析した。その結果はFujimoto H, et al. J Comp Neurol. 2017 Mar 1;525(4):868-884.に発表した。 齧歯類の下丘inferior colliculus(IC)は聴覚系の中で最も大きな神経核の一つで,神経細胞数は聴覚皮質とほぼ同じである。内耳よりの聴覚情報は様々な経路を経ていったん下丘に収斂したのち,上位に伝送される。下丘は聴覚情報を統合する神経組織として重要であるが,その神経回路特性は不明である。 一連の解析において、マウス下丘の神経化学的細胞構築のP14以降の生後発達について調べた。この時期は生理的聴覚が概ね形成された以降に対応する。ニューロンをGABAergicとnon-GABAergicの二種類に分けて細胞密度を測定した。さらにparvalbumin (PV), nitric oxide synthase (NOS)を用いてニューロンを分類した。 その結果,PVは代表的な抑制性神経のマーカーと考えられていたが,意外にも下丘では約50%のPV 陽性細胞は興奮性であった。生後発達において,抑制性ニューロン全体の細胞密度は変化しなかった。しかしPV, NOSで下位分類すると,生後発達に伴って細胞密度の変化が見られ,それは特にICCvで顕著であった。抑制性ニューロンの中では,PV単独陽性ニューロンは生後発達で減少した.一方でPV・NOS両陽性ニューロンは増加し,逆方向の変化を見せた。興奮性ニューロンの中ではPV陽性細胞は増加し,NOS陽性細胞は減少した。 この傾向は,上記の抑制性ニューロンとは逆で鏡像のような変化であり,詳細は不明であるものの,システマチックな回路全体の再編成を示唆している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下丘という一単位の神経核において、統一的な神経解剖学的描写を可能としたため。
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今後の研究の推進方策 |
特に電気生理学特性との関連を重視して、今回の知見を発展的に敷衍し、より総合的な聴覚情報処理の描像を探究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
9月に行った異動に伴い、基盤整備的予算を計画したが、予定より順調に整備が完了したために予算より実績額が少なくて済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
さらに基盤整備および実験遂行を進めることに使用予定である。
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