研究課題/領域番号 |
16K18383
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
綾木 孝 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (60749555)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | optineurin / NF-кB / multiple proteinopathy / 神経細胞死 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
OPTN変異を持つALS患者でTDP-43以外にリン酸化タウやαシヌクレインの沈着が起こっていることを論文報告した。このことから、OPTNはALS以外の変性疾患にも広くかかわっている可能性を考えた。そこで、αシヌクレイン陽性疾患でのOPTNの関与について検討したところ、多系統萎縮症の被殻において、コントロールに比べると、活性化ミクログリアでOPTNやParkinが陽性であることを見出した。また、神経炎症系のシグナルについて検討したところ、ミクログリアにおいて、NLRP3インフラマソーム関連タンパクが陽性であることを見出した。既報告から、NLRP3インフラマソームはオートファジー経路によって分解されることが知られており、オートファジー経路の活性化によって、インフラマソーム経路の制御を試みることにした。そのため、初代培養細胞、ミクログリアでαシヌクレインフィブリルでの刺激を行い、OPTN、p62のWBやインターロイキンの測定を行った。 また、2017年の報告で、大阪市立大学の分子病態学の徳永 文稔教授らとの共同研究で、ALS-OPTNの剖検脳ででNFκBシグナルの構成タンパクであるリン酸化p65が異常沈着していることを報告したのを受けて、他疾患で検討したところ、リン酸化p65は、認知症の原因疾患であるアルツハイマー病のタウオパチー病理などの変性疾患において、顆粒空胞変性や、神経突起にも沈着していることを見出した。 そのほか、電子顕微鏡でアルツハイマー病やALSなどの認知症の症例を観察し、標本の固定の条件の検討を行った。 そのほか、本城らと、アルツハイマー病の病理標本を検討し、異常タンパクの蓄積によって引き起こされる小胞体ストレスに重要なタンパク質であるPDIとP5がオリゴデンドロサイトで減少していることを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、論文で報告したOPTNの遺伝子変異を有する患者由来剖検脊髄の標本で直鎖状ユビキチンや活性型NF-кB因子(リン酸化p65)は、孤発性ALSやアルツハイマー病での凝集物が見られた。興味深いことに、リン酸化p65は、オートファゴソームとの関連性が報告されている顆粒空胞変性で多く陽性がみられた。一方で、選択的オートファジーのアダプタータンパクについて他のアダプタータンパクであるp62、NDP52、NBR1での免疫組織学的検討を行い、孤発性ALSやアルツハイマー病の剖検脳でコントロールとの差異を見出すために検討を行ったが、既に知られているp62やOPTN陽性の凝集物以外には、オートファジー経路が亢進している確証は得られなかった。このため、染色性の明らかになっているp62やOPTN陽性と、他の炎症系シグナルとの関連を中心に検討することにした。
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今後の研究の推進方策 |
神経炎症系のシグナルについて、ミクログリアにおけるNLRP3インフラマソーム関連タンパクとOPTNの関連について引き続き、剖検脳での検討を行う。 また、認知症の原因の多くをしめる疾患であるアルツハイマー病の顆粒空胞変性とOPTNとNFκBシグナルについて、分布や頻度を疾患ごとに比較し、今後も同様に病理学的解析を進めていく。 また、引き続き、初代培養細胞、ミクログリアでαシヌクレインフィブリルなどの凝集タンパクでの刺激を行い、OPTN、p62のWBやインターロイキンの測定を行い、オートファジー経路の活性させる薬剤によって、インフラマソーム経路の制御を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の余剰金があったことに加え、昨年に購入した一次抗体とバッファーを引き続き本年度も使用するなどしたため。本年度は、新たな免疫染色に必要な一次抗体の購入と論文化に必要な費用(英文校正や投稿料)として使用する。
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