研究課題/領域番号 |
16K18392
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪井 大輔 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (80584672)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DISC1 / 統合失調症 / ミクログリア / サイトカイン |
研究実績の概要 |
統合失調症は主に思春期から青年期で発症する難治性の精神疾患の1つである。Disrupted-in-Schizophrenia-1(DISC1)は最も有力な統合失調症発症関連因子であり、神経発達に関わる分子として知られている。これまでに研究代表者は、DISC1が神経細胞とともにミクログリア細胞で発現していること、Disc1機能欠損マウスにおいてミクログリアの細胞数に異常が認められることを見出している。ミクログリア細胞は脳内で免疫応答を含む様々な生理機能に関わっている。本研究では、ミクログリア細胞でのDISC1の生理機能やその分子基盤を明らかにするため、次の2課題について解析に取り組む:1.ミクログリア細胞におけるDISC1の生理機能の解明、2.ミクログリア細胞におけるDISC1シグナル伝達機構の解明。 本年度で研究代表者はミクログリア細胞におけるDISC1の生理機能の解明するため、野生型およびDisc1ノックアウト(KO)マウス由来ミクログリアについてサイトカイン分泌の比較検討を行った。野生型ミクログリアに比べてDISC1-KO由来ミクログリアはIL-1betaやTNFalphaの分泌量が増加していることが分かった。この結果は、DISC1がサイトカイン分泌制御に関与していることを示唆していた。また研究代表者は、ミクログリア細胞でDISC1がどのような生理機能に関与しているかを明らかにするため、プロテオミクス法を用いてミクログリア細胞特異的なDISC1相互作用分子を網羅的に同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者はミクログリア細胞におけるDISC1の生理機能の解明するため、野生型およびDisc1ノックアウト(KO)マウス由来ミクログリアについてサイトカイン分泌の比較検討を行った。野生型ミクログリアに比べてDISC1-KO由来ミクログリアはIL-1betaやTNFalphaの分泌量が増加していることが分かった。この結果は、DISC1がサイトカイン分泌制御に関与していることを示唆していた。また研究代表者は、ミクログリア細胞でDISC1がどのような生理機能に関与しているかを明らかにするため、プロテオミクス法を用いてミクログリア細胞特異的なDISC1相互作用分子を網羅的に同定した。これらの知見はDISC1が関わるミクログリア活性化の分子基盤を明らかにする手がかりとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は既に、DISC1がミクログリア細胞においてゴルジ体に集積していること、全脳タンパク質可溶化物を用いたDISC1-affinity columnクロマトグラフィー解析からRabやArfsを含む小胞輸送を制御する低分子量Gタンパク質がDISC1相互作用分子として得られていること、そして神経細胞においてDISC1が小胞・蛋白質輸送を制御していることを見出している。ミクログリア細胞可溶化物を用いたプロテオミクス解析結果と上述した知見を勘案して、サイトカイン含有小胞の輸送や分泌機構に関わるシグナル伝達経路とDISC1の関連性について着目する。研究代表者はDISC1と得られた相互作用分子について結合実験を行い、結合領域を決定する。そして、特定のタンパク質結合能を欠いた変異体(ドミナントネガティブ)を作製し、ミクログリア細胞へ遺伝子導入する。申請者は形質導入細胞においてPoly I:C刺激に応じた細胞の形態変化やサイトカイン分泌評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に係る旅費についての支出差額は予定していた学会や研究打ち合わせの都合上、回数が減少したこと。また物品費やその他の差額については一部の実験や受託解析を次年度へ延期したために生じた。そこで研究代表者は次年度において研究計画で示した解析と共に延期した一部実験や解析を追加して行う。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度において同定したDISC1相互作用分子に対する抗体を次年度において受託解析により作製するため、当該費用を”その他”として計上する。またDISC1と相互作用分子の生理的意義を明らかにするため、分子細胞生物学的解析を行う上で細胞培養器具、試薬等を”物品費”として計上する。
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