研究課題
腫瘍随伴マクロファージ(Tumor-associated macrophage: TAM)は、増殖因子、血管新生因子、免疫抑制因子などを発現することにより腫瘍増殖を促進する能力 を持つ細胞群である。また、放射線治療や血管新生阻害剤などによる細胞障害が、TAMの誘導に働き、抗がん治療耐性の原因となっている。このためTAMは新たな がん治療の重要な標的の一つとして考えられている。本申請研究では、転写因子MafBが未分化なマクロファージ前駆細胞の分化を制御するメカニズムを解明し、 脾臓におけるマクロファージ前駆細胞を標的としたTAMを減少させる治療法の基盤を確立することを目的とした。 申請者は、マクロファージに高発現する大Maf群転写因子MafBの、様々な疾患との機能的関連を解析している。申請者はMafb欠損マウスを独自に樹立し解析して いる。これまでの解析から、マクロファージ特異的にMafbを欠損させたマウス(MafbCKO)にLLC細胞(マウス肺がん細胞)を皮下移植すると、腫瘍の大きさが顕 著に大きくなるという結果が得られている。このことはマクロファージにおけるMafBは腫瘍増殖を抑制することに機能するといえる。また腫瘍内のマクロファー ジ数を測定したところMafbCKOの腫瘍内のマクロファージ数は劇的に増加していることが明らかとなった。これはMafBは腫瘍内のマクロファージ数を決定する因 子であり、MafBを過剰発現させるような治療をおこなうことで新たながん治療法確立の基盤となると考えられる。
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Experimental Animals
巻: 68 ページ: 103-111
10.1538/expanim.18-0093