研究課題/領域番号 |
16K18402
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉見 一人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50709813)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / ゲノムヒト化マウス / 大脳化 |
研究実績の概要 |
本研究では、大脳化を導いたとされる候補遺伝子、非コード領域の両方を対象とし、候補領域の選抜、およびゲノムヒト化マウスの作製・系統化を目指している。本年度は、昨年度に引き続き、大脳化関連遺伝子のゲノム改変マウスの系統化および表現型解析、ヒトまたはマウスで高度に保存された非コード領域のゲノムヒト化マウスの作製と系統化を実施した。 昨年度、摂餌量および体重の増加がみられたCdk5rap2遺伝子のN末端領域ヘテロ欠損マウスについて、血液を用いた生化学検査を行ったが、全ての項目で有意な差は得られなかった。現在、高脂肪食時の表現型解析を実施している。ホモ欠損マウスも得られてきたため、表現型解析を行うことで巨大化の要因を探る予定である。加えて、同領域のアミノ酸配列が、哺乳類で高度に保存されているにもかかわらずヒトだけでアミノ酸置換がみられることを見出した。そこで、ヒト型アミノ酸に置換したマウスをCRISPR/Cas9により作製した。現在、系統化しており、同様に表現型解析を行う予定である。 一方、霊長類ゲノムとの比較ゲノム解析により、げっ歯類のみで高度に保存された7番染色体上約2kbの非コード領域(SBG1)に着目をし、大規模欠失マウス(SBG1-LD)およびヒト配列置換マウス(SBG1-KI)を作製することに成功した。現在ライン化を行っているが、SBG1-KI系統について、ホモ型個体が得られない胎生致死の表現型を得ている。今後、胎児期での状態を詳細に解析する予定である。このような進化の過程で保存されてきたこの非コード領域がマウスの発生、特に脳の発生に関わる影響を明らかにすることで、ヒト大脳化の一端を明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、申請者の異動に伴い、動物の移動およびクリーン化に時間を要したため、表現型解析は血液検査および一般的な解析結果にとどまっている。しかし一方で、ヒト型のDNA配列を有するマウス系統を新たに複数系統作成し、系統化している。また、コード領域Cdk5rap2遺伝子および非コード領域SBG1におけるゲノム改変マウスについて表現型に差がみられており、順調に新しい知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、これまでの研究で作製および系統化したゲノム改変およびゲノムヒト化マウスについて、脳の大きさ、重量、脳構造について経時的な形態学的、組織学的解析を行い、大脳化に関連した表現型への影響を評価する。Cdk5rap2遺伝子欠損マウスについてはCdk5rap2の脳内での発現時期、発現部位の検討を実施する。脳サイズ、構造に変化が見られた場合は行動解析を行い、大脳化が学習・認知能力に及ぼす影響を評価する。一方、SBG1-KI系統については引き続き系統化を行うと同時に、胎生期での表現型解析を進めて胎生致死の原因を探る。また、哺乳類培養細胞におけるLuciferaseアッセイによりSBG1のエンハンサー領域としての機能解析を進め、SBG1領域がヒトもしくはマウス進化に重要な非コード領域であることを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の異動に伴い、実験に使用する動物の移動とクリーン化に時間を要したため、それらの動物の表現型解析、病理解析に未使用額が生じた。これらについては次年度に計画通り実施する予定である。
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