初年度、次年度の大きな成果として、ヒトマクロファージの分化を促進するNOG hIL-6 Tgマウスを用いたヒト腫瘍モデル動物を樹立し、このモデルに現れるTAM様ヒトマクロファージの特性について解析を行い、論文として発表した。また、腫瘍モデルの作製に有用な新たな遺伝子改変NOGマウスとして、ヒト単球・マクロファージの誘導を促すためのヒトM-CSF発現マウス、マウス骨髄系細胞を除去するためのCXCR2やG-CSFレセプターの欠損マウスを作製し、そのヒト造血幹細胞移植時の特性や顆粒球の減少の有無について検討を行った。 最終年度は、ヒト造血幹細胞を移植したヒトM-CSF発現NOGマウス(NOG hM-CSF Tgマウス)にヒト腫瘍株を移植し、がん患者に特徴的な免疫抑制性マクロファージ・単球であるTAMやMDSCの誘導について検討を行った。本マウスはNOG IL-6 Tgマウスよりも効率的にヒト単球・マクロファージの分化を促し、脾臓や末梢血のみならず肝臓や肺などの組織においても多数の同細胞が確認された。ヒト腫瘍株移植時には、腫瘍内へのヒトマクロファージの浸潤、ならびにTAMやMDSCのマーカーの一つであるCD163を発現した細胞が腫瘍内に多数存在することが確認された。しかしながら、IL-4レセプターの発現やHLAの低発現といった、その他のTAMやMDSCに特徴的な形質は確認できなかった。よって、今後は本マウスに現れる腫瘍内ヒトマクロファージについて、免疫抑制能を含む機能的特性について解析を行う必要がある。 本研究で樹立されたモデル動物は、in vivoでのヒトのTAM、MDSCの解析を容易にし、また創薬ターゲットとしても注目されているこれらの細胞を対象としたin vivo薬効試験を可能とするものであり、がん研究やがん治療の発展に貢献するものである。
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