研究課題/領域番号 |
16K18406
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
吉村 祐貴 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 研究員 (50771242)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工染色体ベクター / トランスクロモソミックマウス / 体細胞核移植 / 微小核融合 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、方法(1)体細胞核移植による作製法、及び(2)顕微受精を応用した微小核移植による作製法による技術基盤の確立を行った。 (1)については、ドナー細胞の作製から行った。人工染色体ベクターのモニターにEGFPをレポーターとして使用するために、MI-MACベクターを保持するES細胞にEGFP遺伝子導入ベクターと部位特異的組換え酵素発現ベクターを導入し、MI-MACベクター上へのEGFP遺伝子導入を試みた。得られたクローンを解析し、MI-MACベクター上にEGFP遺伝子導入ベクターが挿入されていることが確認できたものの、導入した遺伝子に部分的な欠損が見られた。よって、EGFP遺伝子導入ベクターの再構築を行っている。また、本研究は人工染色体ベクターを用いた複数外来遺伝子導入マウス作製のための基盤技術開発であることから、当初はMI-MACベクターの使用を予定としていたものの、MI-MACベクターと同様に、将来的に複数遺伝子の導入が可能であり、かつ、すでにEGFP遺伝子が導入された人工染色体ベクターであるMACベクターもMI-MACベクターと並行して、実験に使用することとした。MAC ES細胞をドナーとして体細胞核移植を行った胚のうち、約7%の胚が2細胞期胚に発生しており、さらに発生させたところGFP陽性を呈する胚も確認できた。 (2)については、EGFP陽性MAC ES細胞の微小核形成条件の検討から行っており、現在進行中である。未だ、EGFP陽性MAC ES細胞の微小核形成条件が決定していないため、MACを保持しているCHO細胞から作製した微小核を用いて、未受精卵への微小核移植の条件検討を行っており、操作手順が確立されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、方法(1)体細胞核移植による作製法、及び(2)顕微受精を応用した微小核移植による作製法による技術基盤の確立を目標とした。 方法(1)については、MI-MACベクターを用いた体細胞核移植には至っていないものの、MI-MACベクターと同様に複数遺伝子の導入が可能であり、かつEGFP陽性であるMAC ES細胞を用いた体細胞核移植を行ったところ、2細胞期胚を得ることができた。計画の変更はあったが、本研究で目的としていた人工染色体ベクターを含むマウスES細胞をドナー細胞とした、体細胞核移植によるトランスクロモソミック(Tc)マウス作製法の技術基盤が確立でき、その後のin vitro解析まで着手できた。 方法(2)については、方法(1)における計画変更に伴い、MAC ES細胞の微小核形成条件の検討を行っており、未だ条件決定ができていないため、当初の計画よりやや遅れているが、MAC CHO細胞より回収した微小核を用いた未受精卵への微小核注入法の検討を並行して進めており、その遅れは軽微である。 以上より、総合的に考えて概ね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
方法(1)体細胞核移植については、EGFP陽性MI-MAC ES細胞の作製を進めるとともに、MAC ES細胞をドナーとした体細胞核移植の発生率等のin vitro解析を行う。また、方法(1)によるTcマウスの個体化を試み、その出生率や、各主要臓器における人工染色体ベクターの安定性についてGFPを用いて評価する。 方法(2)については、MAC ES細胞もしくはEGFP陽性MI-MAC ES細胞の微小核形成条件の検討を引き続き行う。MAC ES細胞の微小核形成条件が決定できた際には、MAC ES細胞の微小核を用いた微小核注入を行う。しかしながら、条件が決定できなかった場合には、微小核形成の実績がある細胞株であるマウスA9細胞やCHO細胞を用いた人工染色体ベクター微小核の回収と、その微小核を用いた顕微注入法も検討する。また、顕微受精を応用した微小核移植が困難な場合には電気刺激による受精卵と微小核の融合についても検討をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は2回学会へ参加するための旅費を計上していたが、学会参加は1回のみで、かつその学会会場が職場近辺であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の学会発表もしくは参加のための旅費として、使用予定である。
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