糞便微生物叢移植(FMT)療法の前臨床研究に有用な霊長類モデルの確立をめざして、コモンマーモセットを用いてFMTの疾患に対する有効性の検討を進めた。 平成29年度は、マーモセットにおいてヒトに類似した病態を示すClostridium difficile感染症(CDI)に対するFMTの有効性を検討した。研究対象としたマーモセット集団ではC. difficile(CD)が常在しており、マーモセットから分離されたCDはトキシンAおよびトキシンB遺伝子を保有し、MLST解析ではヒト分離株と遺伝子型が一致することを認めている。予備検討により、ドナー糞便、事前投薬、投与経路などのFMTのプロトコルを確定し、再発性CDIを罹患したマーモセットへFMTを実施した。その結果、FMT実施例の3/4程度(17/22)において12週間以上CDIの再発が認められなかったことから、FMTによるCDI再発予防効果が期待された。また、FMTに使用したドナー便の状態については、新鮮便(10/13)と凍結便(7/9)とで非再発率に差は認められなかった。FMT実施個体の糞便とドナー糞便を用いて16SrRNA遺伝子配列による細菌叢解析を実施したところ、CDI再発個体ではドナー糞便との菌叢構成の違いが認められたが、非再発個体の一部ではドナー糞便に近似した菌叢構成が観察されており、詳細について解析を継続している。 これまでの成果により、慢性腸炎およびCDIを罹患したマーモセットにおいてFMTによる改善効果とFMT後の糞便細菌叢の変化が観察されており、マーモセットを用いたFMTの評価系が有用であることが示唆された。
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