一酸化窒素NOのセカンドメッセンジャーであるニトロcGMPは、2008年に発見されてから徐々にその機能などが明らかにされてきているが、未だ不明な点が多い。上皮細胞や脂肪細胞など様々な細胞に存在することが報告されていたが、幹細胞に関してはこれまで明らかにされていなかった。そこで本年度は、造血細胞を対象としてこの分子の細胞内レベルの評価を行った。マウスの骨髄から細胞を回収し、抗体染色後セルソーターによりLineage-positiveのグループ(Lin+; 分化した細胞が多く含まれる細胞群)とLineage-negativeのグループ(Lin-; 未分化細胞が多く含まれる細胞群)とに分けて回収した。回収後細胞を固定化し、透過化処理した後にニトロcGMP認識抗体でさらに染色をし、フローサイトメトリーによって各細胞群のニトロcGMPレベルを評価した。すると、Lin-細胞よりもLin+細胞の方が、よりニトロcGMPレベルが高いという結果が得られた。未分化な造血幹細胞では、活性酸素(ROS)が低く抑えられていることが知られており、NOとROSの下流で生成するニトロcGMPも、結果として低く抑えられているものと推測される。今後、ニトロcGMPと幹細胞性との関連性の検証として、in vitroでのコロニー形成能や移植後の造血能の評価を行い、幹細胞中のニトロcGMPレベルを変動させた場合に幹細胞機能に影響が見られるかどうか、明らかにしていきたい。
|