造血幹細胞機能および白血病発症におけるヒストン脱メチル化酵素JMJD3の機能解析

2017 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16K18418
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 山崎 憲政 広島大学, 技術センター, 技術主任 (70564136)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: JMJD3 / 造血幹細胞 / 白血病 / ヒストン脱メチル化酵素 / ノックアウトマウス / エピジェネティクス

研究実績の概要

申請者らは、ヒストンH3の27番目のリジン残基（H3K27）に対する脱メチル化酵素であるJMJD3のコンディショナルノックアウト（cKO）マウスを作製し、Jmjd3欠失造血幹細胞は競合的骨髄移植おいて造血再構築能が低下していること、およびMLL-AF9融合遺伝子による白血病発症に抵抗性であることを見いだした。これらの結果は、JMJD3は正常造血幹細胞の機能維持のみならず、がん遺伝子による造血細胞の腫瘍化に重要な働きをしていることを示している。本申請では、Jmjd3 cKOマウスを用いて、JMJD3がどの様な分子機構を介して正常造血幹細胞活性や白血病発症に関与しているかについて明らかにすることを目的とした。
申請者らは、Jmjd3の欠損に伴い発現が変動した遺伝子群の網羅的な解析を行い、増殖ストレス誘導後の幹細胞においてJMJD3が細胞周期を制御していることを明らかにした。細胞周期関連遺伝子に注目してその発現変化を定量PCRにより解析した結果、Jmjd3欠損白血病幹細胞ではコントロールと比較して、CDK阻害蛋白質であるp16INK4aとp19ARFの発現量が低下していた。さらに、JMJD3の直接的な制御が関与しているのか検討する目的で、抗トリメチル化されたH3K27(H3K27me3)抗体を用いたChIP-PCRを行った結果、JMJD3の欠損に伴ったp16INK4aとp19ARFの発現制御領域のH3K27me3レベルの亢進が認められた。これらの結果から、JMJD3はH3K27の脱メチル化を媒介し、p16INK4aとp19ARFの発現を正に制御することで、増殖ストレス誘導後の幹細胞の細胞周期を調節していることが明らかとなった。

研究成果

• [雑誌論文] Acquired expression of CblQ367P in mice induces dysplastic myelopoiesis mimicking chronic myelomonocytic leukemia. (2017)
  • 著者名/発表者名: Nakata Y, Ueda T, Nagamchi A, Yamasaki N, Ikeda KI, Sera Y, Takubo K, Kanai A, Oda H, Sanada M, Ogawa S, Tsuji K, Ebihara Y, Wolff L, Honda ZI, Suda T, Inaba T, Honda H.
  • 雑誌名: Blood 巻: 129(15) ページ: 2148-2160
  • DOI: 10.1182
  • 査読あり
• [学会発表] JMJD3 plays essential roles in the maintenance of hematopoietic stem cells and leukemic stem cells through the regulation of p16INK4a. (2017)
  • 著者名/発表者名: Yuichiro Nakata, Norimasa Yamasaki, Takeshi Ueda, Kenichiro Ikeda, Akiko Nagamachi, Toshiya Inaba and Hiroaki Honda.
  • 学会等名: 第55回アメリカ血液学会
• [学会発表] Roles of UTX, a histone H3K27 demethylase, in normal hematopoiesis and hematologic malignancies. (2017)
  • 著者名/発表者名: Yasuyuki Sera, Takeshi Ueda, YuIchiro Nakata, Ken-Ichiro Ikeda, Norimasa Yamasaki, Hideaki Oda, Akiko Nagamachi, Akinori Kanai, Toshio Suda, Keiyo Takubo, Hiroaki Honda.
  • 学会等名: 第78回日本血液学会