研究課題
骨は造血幹細胞や白血病幹細胞のニッチを形成し、造血細胞や腫瘍細胞の維持生育に骨微小環境が深く関与する。多発性骨髄腫は、現在でも難治であるが、とりわけ骨に親和性を持ち進行性の骨破壊病変を形成し、骨微小環境に依存した治療抵抗性を獲得する。成熟骨芽細胞は、その前駆細胞である骨髄間質細胞とは全く対照的に骨髄腫細胞にアポトーシスを惹起することを見出した(PLoS One, 2010)。従って、骨系細胞はその種類、分化段階によって、腫瘍進展を正あるいは負に調節するという興味深い現象が明らかになったがその機序は不明であった。今回、前骨芽細胞株MC3T3-E1にBMP-2を添加し骨芽細胞分化を誘導させると骨髄腫細胞株との共培養で時間依存性に細胞死を誘導した。またMM細胞のミトコンドリア量とATP産生量を抑制しAMPKのリン酸化を誘導した。AMP類似物質AICARによるAMPKの活性化はMM細胞に細胞死を誘導し、逆にAMPK阻害薬dorsomorphinは骨芽細胞によるMM細胞の細胞死を減弱させた。成熟骨芽細胞との共存よりMM細胞のPim-2とともにミトコンドリアの量や機能の調節因子であるPGC-1αの発現を抑制し、Pim阻害薬SMI16aの添加によりMM細胞のPGC-1αの発現が減少し、AMPKがリン酸化した。以上より、骨髄間質細胞はMM細胞の抗アポトーシス媒介因子のPim-2の発現を亢進しMM細胞を増殖させるが、骨髄間質細胞から分化誘導した成熟骨芽細胞は、逆にMM細胞のPim-2の発現を抑制し、Pim-2下流のMcl-1やc-Mycなどの生存因子の発現減少とともにPGC-1αの発現抑制によるミトコンドリアの機能障害やAMPKの活性化によるエネルギー代謝の攪乱を介しMM細胞の細胞死を誘導すると考えられた。今後、さらに詳細な機序の検討を予定している。
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