研究課題/領域番号 |
16K18427
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小幡 裕希 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 講師 (20609408)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | GIST / c-Kit / PI3K / Akt / STAT5 / マスト細胞腫 / ゴルジ / 細胞内輸送 |
研究実績の概要 |
本研究は、消化管間質細胞腫 (gastrointestinal stromal tumour: GIST) におけるKitの恒常的活性化変異体の増殖シグナルが、「細胞内でいつ・どこから発信されるのか」を明らかにすることである。本年度は、患者から樹立されたGIST細胞株および腫瘍切片の臨床標本におけるKitの細胞内局在について、免疫蛍光染色法と共焦点レーザー顕微鏡による解析をおこなった。興味深いことに、GIST細胞株において、Kit変異体は核近傍領域に集積しており、その領域はトランスゴルジ槽とよく一致した。この結果は、臨床標本のGISTの腫瘍切片でも同様であり、GISTにおけるKit変異体はゴルジ体に集積することが明らかとなった。さらに、Kitの活性化の指標である自己リン酸化部位を認識する抗体で蛍光イメージングしたところ、Kitの活性化はゴルジ体のみで起こっていた。実臨床で問題となるKit阻害剤イマチニブに抵抗性を持つKit変異体も、ゴルジ体に集積し、そこのみで活性化していた。GISTにおけるKitシグナルは、これまで考えられてきた細胞膜ではなく、ゴルジ体で起こることが示唆された (Obata et al., 2017, Oncogene)。最近、我々は、マスト細胞腫のKit変異体がエンドリソソームに集積していることを見出しており (Hara and Obata, 2017, Plos One; Toyoshima et al., 2017, Int. Immunol.)、本研究によって、同じ変異型Kitであっても、がん種が異なることでシグナルプラットホームが異なることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GISTにおけるKitシグナルがゴルジ体のみで起こることを示唆するデータを得た。さらに、Kit阻害剤イマチニブに抵抗性を持つKit変異体もゴルジ体でシグナル伝達することを見出した。この研究成果は、2017年2月13日にOncogene誌のオンライン版に掲載された。また、Kit変異体を発現するマスト細胞腫との比較をおこなっており、同じ分子種であっても、がん種が異なることで、増殖シグナルが起こる場所が異なることも明らかにした (Hara and Obata, 2017, Plos One; Toyoshima et al., 2017, Int. Immunol.)。
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今後の研究の推進方策 |
GISTにおけるKitの異常局在についてのメカニズムの詳細を明らかにするために、共免疫沈降法と質量解析を組み合わせた実験をおこなう。得られた情報を元に、機能蛋白質の候補をノックダウンまたは過剰発現させ、Kitの細胞内局在の変化およびシグナルへの影響を調べる。さらに、Kitの局在機構におけるマスト細胞腫との違いについても検討する。また、GIST・マスト細胞腫におけるKit変異体の異常局在は、野生型Kitと明らかに異なるので、その仕組みの理解を応用した治療戦術の構築をおこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
GISTにおけるKitの異常局在の原因について、共免疫沈降法と質量解析を用いて明らかにする予定だったが、論文のリビジョンが複数重なり、それができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
Kitを免疫沈降するためのモノクローナル抗Kit抗体・Protein G-Dynabeads, トリプシン, ペプチド精製のためのカラム・試薬を購入し、質量解析をおこないたい。
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