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2016 年度 実施状況報告書

細胞外放出されるimportin α1が肝がん微小環境で果たす役割

研究課題

研究課題/領域番号 16K18434
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

山田 幸司  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90570979)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード核輸送因子 / 肝がん / 微小環境 / 細胞外放出
研究実績の概要

核輸送因子であるimportin α1は肝がん含め、様々なタイプのがん種の組織で高発現しているが、その機能的役割は依然不明のままである。最近、研究代表者らは、肝がん細胞株の細胞膜上やその培養液中に、importin α1が存在することを見出し、現在その機能解析を行っている。これまでに肝がん細胞株(HepG2, Hep3B)を免疫不全マウス(NOD/Scid)の皮下に移植し、腫瘍形成後に腫瘍塊を摘出し、生細胞を単離してフローサイトメトリー解析を試みたところ、腫瘍細胞の細胞膜にimportin α1の発現が確認された。また、形成腫瘍内にはがん細胞のみならず、多様な間質細胞が存在することから、各種間質細胞の表面抗原の抗体を利用して細胞膜importin α1の発現の解析を計画したところ、現在までにマウス由来の血管内皮細胞の細胞膜にヒトimportin α1が検出されることを見出した。このことから、がん細胞から放出されるimportin α1が周囲の微小環境に影響を与えている可能性が示唆された。現在、血管内皮以外の細胞(線維芽細胞や各種免疫細胞など)に対しても、各マーカータンパク質に対する抗体を獲得し、同様のアッセイを試みている。また、肝がん細胞株は、低血清含有培地で培養することで、importin α1の細胞外放出量を増大させることも突き止めた。このことから、importin α1は能動的な機構に依存して細胞外に放出されていることが示された。今後、血管内皮細胞と栄養飢餓状態の肝がん細胞株との共培養系を行い、細胞外importin α1による血管内皮細胞機能への影響を明らかにすると共に、動物モデルを用いて血管形成における細胞外importin α1の役割を検討していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度では、importin α1の細胞外局在が生体内でも起きていることを示せただけでなく、がん細胞周囲の細胞にも影響を与える可能性を示すことができた。これはがん微小環境におけるimportin α1の役割を明らかにする上で貴重な結果であるといえる。これらの成果は国際学会および査読付き国際誌において公表されている。以上よりおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

細胞外importin α1の血管内皮細胞機能に与える影響を解明する。具体的には、血管内皮細胞株を用いて、増殖能や移動能、産生サイトカインの変化をプレートアッセイにより解析していく。また細胞外importin α1の機能を生体内で評価するために、既存の自作抗importin α1モノクローナル抗体を用いて解析する。すでに細胞株を用いた解析から、当該抗importin α1モノクローナル抗体が、細胞増殖抑制効果を示すことがわかっているので、マウスモデルを用いて抗腫瘍効果はもちろん、転移や血管分布など腫瘍環境にどのように関わるかを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、研究により得られた成果を国際学会および国際誌に公開しており、研究は順調に進展している。しかし、対外的な活動に伴った実験消耗品および試薬などの購入の遅れにより当該助成金が生じた。

次年度使用額の使用計画

細胞外importin α1の機能を解明するために以下の消耗品を使用予定である。生化学実験に係る抗体や、細胞培養実験に用いる新規細胞株(血管内皮細胞)、培養液、ディッシュ、ピペット等の細胞培養関連製品に加え、siRNAの作成・購入、阻害剤の購入といった消耗品を想定している。また、学会参加や打ち合わせ等の出張に伴う旅費、その他、論文投稿に係る英文校正や投稿料などが見込まれる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Importin α: a key molecule in nuclear transport and non-transport functions2016

    • 著者名/発表者名
      Y. Miyamoto, K. Yamada, Y. Yoneda
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemistry

      巻: 162 ページ: 69-75

    • DOI

      10.1093/jb/mvw036

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Two isoforms of TALDO1 generated by alternative translational initiation show differential nucleocytoplasmic distribution to regulate the global metabolic network.2016

    • 著者名/発表者名
      T. Moriyama, S. Tanaka, Y. Nakayama, M. Fukumoto, K. Tsujimura, K. Yamada, T. Bamba, Y. Yoneda, E. Fukusaki, M. Oka
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 6 ページ: 34648

    • DOI

      10.1038/srep34648

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Extracellular released importin α1 stimulates proliferation of cancer cells2016

    • 著者名/発表者名
      山田幸司、米田悦啓、岡正啓
    • 学会等名
      第75回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-12-06 – 2016-12-08
  • [学会発表] Identification of cell surface localization of a nuclear transport factor importin α1 and its significance in FGF signaling2016

    • 著者名/発表者名
      K. Yamada, Y. Yoneda
    • 学会等名
      The 41st Naito Conference
    • 発表場所
      北海道
    • 年月日
      2016-07-05 – 2016-07-08
  • [学会発表] Cold stimulation evokes cellular sensitivity to antinuclear antibodies of patients with systemic sclerosis via induction of cell surface localization of hnRNP-K2016

    • 著者名/発表者名
      山田幸司、世良田聡、岡正啓、藤本穣、仲哲治、米田悦啓
    • 学会等名
      第68回日本分子生物学会年会・第11回日本ケミカルバイオロジー学会 合同学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2016-06-15 – 2016-06-17

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公開日: 2018-01-16  

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