研究実績の概要 |
核輸送因子であるimportin α1は肝がん含め、様々なタイプのがん種の組織で高発現しているが、その機能的役割は依然不明のままである。最近、研究代表者らは、肝がん細胞株の細胞膜上やその培養液中に、importin α1が存在することを見出し、現在その機能解析を行っている。これまでに肝がん細胞株(HepG2, Hep3B)を免疫不全マウス(NOD/Scid)の皮下に移植し、腫瘍形成後に腫瘍塊を摘出し、生細胞を単離してフローサイトメトリー解析を試みたところ、腫瘍細胞の細胞膜にimportin α1の発現が確認された。また、形成腫瘍内にはがん細胞のみならず、多様な間質細胞が存在することから、各種間質細胞の表面抗原の抗体を利用して細胞膜importin α1の発現の解析を計画したところ、現在までにマウス由来のCD31陽性の一部の血管内皮細胞の細胞膜にヒトimportin α1が検出されることを見出した。このことから、がん細胞から放出されるimportin α1が周囲の微小環境に影響を与えている可能性が示唆された。現在、血管内皮以外の細胞(主に線維芽細胞)に対しても、各マーカータンパク質に対する抗体を獲得し、同様のアッセイを試みているほか、血管内皮における細胞外importin α1の役割解析を行っている。また、肝がん細胞株は、低血清含有培地で培養することで、importin α1の細胞外放出量を増大させることも突き止めた。このことから、importin α1は能動的な機構に依存して細胞外に放出されていることが示された。現在主に、ER-Golgi系の分泌系路の阻害が関与する可能性を示すデータも出ており、さらなるメカニズム解明に向けた研究を推進させている。
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