研究課題/領域番号 |
16K18436
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小峰 啓吾 東北大学, 大学病院, 助教 (10725807)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MUTYH |
研究実績の概要 |
・日本人における散発性大腸癌へのMUTYH遺伝子変異の関与の解明 散発性大腸癌患者のコホート(計97例、年齢:中央値 61歳 (29歳-83歳)、性別:男性 66人、女性 31人、原発部位:盲腸 5例、上行結腸 14例、横行結腸 8例、下行結腸 2例、S状結腸 19例、直腸 49例、手術時pStage: pStage II 5例、pStage III 30例、pStage IV 62例)の全エクソンシークエンスのデータ解析を行った。97検体のうち1検体にMUTYHのstopgain SNVが認められた。変異を認めた検体は、原発部位はS状結腸で、pstageIVで肝転移を認めた症例であった。MUTYHの変異は生殖細胞系変異ではなく、体細胞変異として検出された。 血液検体のMUTYH遺伝子変異解析のために、患者の血液検体を前向きに効率的に収集できるシステムを構築した。経時的に採取を行った患者を含め、22例、42検体を収集した。循環腫瘍DNAの解析のため、効果的なcell free DNA抽出の条件の検討を行った。採血後、2時間以内に1100gで10分間遠心分離を行い、血漿を分離し、凍結、保存する方法とした。腫瘍組織にてKRAS G12D 変異が認められている患者において、本方法にて保管した血漿をdigital PCRにて解析し、同変異を検出することができた。また、BRAF V600E 変異が認められている患者においても同様にBRAF変異を検出することができ、上記の方法が妥当と判断した。以上のようにcell free DNAのMUTYH変異の検出も念頭に置き、検体収集システムの整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はMUTYHの遺伝子変異を次世代シーケンサーでターゲットシークエンス法で解析する予定であったが、散発性大腸癌腫瘍組織の全エクソンシークエンスのデータ97件が得られたため、それを解析することで、次世代シーケンサーベースでのMUTYHの変異の頻度を得ることができた。MUTYH以外の変異についても解析が可能であり、MUTYH変異検体と変異のない検体との比較も可能である。 一方、血液検体については、効率的に検体を収集するシステムを構築するために時間を要し、まだ解析出来てはいないが、一定数の集積はできている。 以上を踏まえ、腫瘍組織の解析においては一定の成果が得られ順調だが、血液検体の解析についてはこれからである点から、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
変異症例が少ないので、現時点でMUTYH変異患者を対象とした臨床試験を施行することは困難である。しかし、研究計画書に記載した通り、大腸癌治療におけるバイオマーカーの開発は急務であり、少数例の検討も臨床応用への有効な布石となる。計画通り、MUTYH変異検体における他の遺伝子変異について既存の治療のターゲットとなるような変異があるかの解析を行う。MUTYH変異検体が、MUTYHの変異のない検体と比較し、遺伝子変異数が多いかどうかについても検討を行う。 また、血液検体におけるMUTYH変異を調べる。血中の循環腫瘍DNAを解析できるように検体を採取するシステムを構築したので、cell free DNAにおけるMUTYH変異の解析も行う予定である。薬物療法施行患者の血液検体を調べることで、薬物療法の耐性化や、腫瘍の増悪にMUTYH変異が関与しているかどうかを検討する。また、MUTYHに関連するようなncRNAの解析についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初まず腫瘍組織検体について次世代シーケンサーベースでターゲットシーケンスを行う予定であったが、97検体分の全エクソンシークエンスのデータが得られたため、その解析に時間を要した。また、効果的な血液検体の収集システム構築に時間を要し、血液検体の解析をまだ行えていないため、物品費について次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
検体の解析に使用する。
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