研究課題
これまでに、極微量(1マイクロリットル)の臨床検体(胸水沈渣の溶解液)から、遺伝子変異型の上皮成長因子受容体(EGFR)を迅速・低コスト・高感度・免疫学的に検出するマイクロ免疫診断チップを開発したが、胸水貯留が認められる肺癌患者の割合が低いことが課題であった。本申請では、これまでの研究成果を発展させ、胸水よりも多くの肺癌患者から検体を採取できる気管支洗浄液を分析し、2種類の遺伝子変異型EGFR(Exon19欠損型とL858R点置換型)を検出することを目的としている。胸水は肺癌患者の約20%からしか採取できないが、気管支洗浄液は肺癌の確定診断に重要な気管支鏡検査において容易に採取できるため、重要な検査対象となる。本研究期間において、目標としていた肺癌患者の気管支洗浄液20検体を収集した。マイクロ免疫診断チップで分析し、その結果を従来の分析法による診断結果と比較した。その結果、気管支洗浄液を対象とした2つの分析法の一致率は、胸水沈渣を対象とした場合と比較して低いことが明らかになった。これは、気管支洗浄液中に含まれるがん細胞由来の遺伝子変異型EGFR分子数が少ないことが原因であると考えられる。また、独自に開発したL858R抗体の性能を評価したが、市販の抗体との比較で大きな性能の差は認められなかった。気管支洗浄液などの微量にしかがん細胞が含まれない検体を分析し、高精度に診断するためには、さらに診断チップの検出感度を向上させる必要がある。また、E746-A750欠損については、症例は少ないが欠損の範囲が異なるものや、挿入変異など多くのバリエーションが存在する。これらの患者にはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬が有効な場合があるため、本診断チップでそれらを検出できるか確認することも重要と考えている。
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