研究実績の概要 |
Digital PCRを用いて、①T790MとEGFR活性型遺伝子変異、②T790MとC797S、を同時に高感度かつ定量的に検出するとともに、これらの遺伝子変異が同じアレル上にあるか、違うアレル上にあるかを区別することが可能な系を確立した。 従来の検査方法によってT790Mが検出された10検体に対して本検出法を用いたところ、第一世代EGFR-TKI投与前、耐性後に関わらず、ほとんど全てのT790Mが活性型遺伝子変異と同一アレルが互いに同じアレル上にあることが示された。同様の結果を細胞株においても示した。さらに次世代シークエンスを用いて本結果の確認を行い、本検出方法の精度を確認した。また、本検出系の検出限界を調べたところ0.04%以下(10,000個のアレル中に4個以上遺伝子変異を認めれば検出可能)であった。この検出限界は、血漿中の腫瘍由来の末梢循環遊離DNA(cfDNA)から変異を検出するのに十分な感度と考えられた。以上は平成28年度~平成30年度の研究内容のうち前半の内容に相当する。 平成28年6月末時点で当院において、第三世代EGFR-TKI耐性となった数例のうち、同意が得られた2名の検体(1名の血液検体、1名の血液検体と腫瘍検体)に対し、我々の方法を用いてC797S、T790Mの同時検出を試みた。C797Sは検出されなかったが、C797Sの発現は第三世代EGFR-TKI耐性症例の約20%であることが報告されており、今後、症例数を増やした検討が必要である。 本方法を用いることで第三世代EGFR-TKI耐性症例における耐性遺伝子変異(C797S)の同定とT790Mとのアレル上の位置関係を明らかにすることが可能となり、日常臨床への導入によって新たな治療戦略(第一世代EGFR-TKIとの併用)に繋がると考えられる。以上の結果を英文誌に投稿し、現在査読中である。
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