研究実績の概要 |
1次スクリーニングとして,パクリタキセル固定化ビーズで回収した結合タンパク質のうち,細胞株によって差次的に得られたバンドから質量分析を行う.それによって得られたタンパク質について,ノックアウト,強制発現による耐性変化を細胞株にて検討する.これらの結果を踏まえ,癌臨床検体を用いて初代培養システムで各検体におけるパクリタキセルの感受性を測定し,そのデータと同タンパク質の遺伝子レベルでの発現量との間に相関があるかを検討することとした. 3種類のパクリタキセルに対する感受性の異なる肺癌細胞株(II18, A549, RERF-LC-KJ)の細胞溶解液とパクリタキセル固定化磁気ビーズ(FGビーズ)を反応させてパクリタキセル結合タンパクを回収してから電気泳動,銀染色にてバンドのパターンを確認し,差次的なバンドの存在が明瞭であった.この中で,RERF-LC-KJにおいて発現の認められるバンドについてLC-MS/MS解析を行った結果,FIGNL1 (fidgetin like-1)タンパクが同定された. FIGNL1をsiRNAによりノックダウンし,IN Cell Analyzerによって耐性細胞株RERF-LC-KJの生存率を評価した.3段階の異なるパクリタキセルに24時間曝露した後,2.7 nMおよび9 nMの低濃度のパクリタキセル曝露を行うと生存率は60-70%まで低下したことが明らかとなった. さらに,AutoDock Vinaを用いたtaxol - FGNL1(二量体)間での結合予測を行った。FGNL1二量体の間に形成されるポケットにパクリタキセルの環構造の1つがはまり込むことが可能であった.これはFGNL1がパクリタキセル固相化ビーズによって回収されていることを理論上証明しうるものである.
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