FIGNL1は微小管切断酵素Fidgetinのファミリーとして哺乳類で同定された.最近ショウジョウバエFidgetinはアセチル化微小管を特異的に切断するのに対して哺乳類では非アセチル化微小管を基質とする違いが明らかとなった.新規標的蛋白FIGNL1の発現抑制によりパクリタキセル耐性細胞株の耐性を喪失させたところ,予想に反して小胞が消失することはなく逆にサイズの増大した小胞の出現頻度が増加し,小胞形成へのFIGNL1関与の可能性が示唆された.我々はFidgetinファミリーの酵素活性中心のアミノ酸配列解析から哺乳類FIGNL1はショウジョウバエFidgetinと同じくアセチル化微小管を切断する可能性を見いだした.そこで培養細胞株の免疫細胞化学と超解像蛍光顕微鏡N-SIMによる観察により,FIGNL1が細胞質内に局在すること,微小管と共局在するものはアセチル化領域に限局されること,それらは他のファミリー分子から予想されたように多量体を形成していると解釈されることを見いだした.アセチル化領域を切断直後と思われる像も多数記録した.さらに,FIGNL1の発現抑制により微小管アセチル化領域が顕著に拡大していることも見いだした.以上の結果に加えて,パクリタキセルは重合微小管に結合し安定化をすることにより細胞周期の進行を阻害すること,昨年度明らかにしたFIGNL1のパクリタキセル結合部位が酵素活性中心異なるということに鑑みると,耐性株におけるFIGNL1発現亢進は,パクリタキセルの微小管へのアクセスを低下させる一方,パクリタキセルによる重合安定化効果を低下させるという状況を生みだすことで,耐性獲得に寄与することが示唆された.
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