がん化学療法では、がん種や患者の状態により使用する薬剤が選択されている。しかしその治療効果には個人差が認められ、個人差が生じる原因メカニズムは明らかにされていない。治療効果の違いは、がん細胞における遺伝子レベルでの特性が関係している可能性が高いと考え、本研究ではがん細胞のゲノムシーケンス解析を行った。解析には、79種類のPDXモデルを用いて行われた9種類の細胞傷害性抗がん剤に対する感受性試験データおよびこれらのxenograftより抽出したゲノムDNAを使用した。スクリーニングとして、59検体を用いて409がん関連遺伝子のエクソンシーケンスを行い、検出された変異について腫瘍中の変異アレル頻度と抗がん剤感受性の関連解析を行った。関連が示唆された変異については、さらに20検体を用いて追試を行った。最も強い関連を示したのはActivin A Receptor Type 2A (ACVR2A)遺伝子上のrs79555258で、腫瘍中の変異アレル頻度が高いほどシクロホスファミド抵抗性を示した。複数の感受性関連変異が同定された薬剤については、変異を組み合わせて解析を行うことでより精度の高い予測が可能になることが示唆された。さらに有用性の高いマーカーを同定する、また抗がん剤感受性や抵抗性のメカニズムを明らかにするため、全エクソーム解析を進めている。これらのデータの蓄積により、最終的にはがん患者一人ひとりに対して、より効果的で毒性の低い抗がん剤治療の提供に繋がると期待される。
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