研究課題
日本人の淡明型腎癌患者を対象に統合的遺伝子網羅解析によると約60%の癌でFGFR4の遺伝子増幅が報告されている。欧米での検討では10%程度であり、この異常は日本人で多いと考えられる。近年、肝癌領域でFGFR4阻害剤の有効性が報告され、臨床試験が開始されている。淡明型腎癌では高率にFGFR4遺伝子増幅を認めており、FGFR4が腎癌治療おいて標的になることを仮説とし、検討を行った。まず手術摘出標本でFGFR4の遺伝子増幅及び発現亢進している症例を多数認めることを確認した。ヒト腎癌細胞株においてFGFR4のコピー数を計測したところ、淡明型腎癌細胞株では3倍体以上であった一方、正常細胞と乳頭状型腎癌細胞株ACHNでは2倍体であった。淡明型腎癌細胞株では概ねFGFR4のコピー数とFGFR4のタンパク発現に相関がみられたが、786Oについては3倍体であったにもかかわらずFGFR4の発現は軽度でACHNと同程度であった。FGFR4特異的阻害剤BLU9931を細胞株に添加したところ、FGFR4のタンパク発現が低かった786O、ACHN、正常尿細管細胞株では細胞増殖抑制効果を見せなかった一方、その他の淡明型腎細胞がん株769P、A498、A704では細胞増殖抑制効果を示した。これらの細胞株についてはBLU9931添加によってAkt、STAT3、ERK1/2のリン酸化レベルの低下が観察された。769P、A498、A704についてsiRNA技術を用いてFGFR4の発現を抑制したところ、BLU9931添加と同様、細胞増殖抑制効果、およびAkt、STAT3、ERK1/2のリン酸化レベルの低下が観察された。
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