研究課題
本年度は、メトホルミンのCD8T細胞機能を介した抗腫瘍作用の分子メカニズムの解明を目指し、以下の項目について研究を行った。1.メトホルミンによるCD8T細胞の解糖系亢進2.その分子メカニズムの解明1.についてはグルコースアナログである2-DGに蛍光標識した2-NBDGを用いて、in vitroおよびin vivoの両方において、メトホルミンによるCD8T細胞のグルコースの取り込みの変化をフローサイトメーターにより解析した。メトホルミン処理により、活性化したCD8T細胞(in vitro)においてグルコースの取り込みの促進を観察した。また、メトホルミン治療した担癌マウス(in vivo)の腫瘍内CD8T細胞のグルコースの取り込みの上昇を観察した。このうち抗原特異的な腫瘍浸潤CD8T細胞、取り分けエフェクターメモリー型CD8T細胞のグルコースの取り込みが顕著であった。2.in vitroの抗CD3、CD28抗体による刺激培養系において1.の作用をSeahorse Flux Analyzerを用いて解析した。メトホルミン処置により活性化CD8T細胞のECAR(解糖系の指標)の顕著な上昇を観察した。また同様の系でメタボローム解析を実施したところ、メトホルミン処置によって解糖系中間代謝産物が非常に高レベルで検出された。これらの作用はAMPK阻害剤CompoundCの処置により消失したことから、メトホルミンによる活性化CD8T細胞の解糖系の上昇にはAMPK分子の活性化が必要であることが明らかになった。近年、糖代謝はCD8T細胞機能に重要であることが示されており、メトホルミンの抗腫瘍作用の詳細なメカニズムとして活性化CD8T細胞の解糖系の上昇が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
代謝解析装置flux analyzerが導入されたことで順調に代謝解析を進めることができている
本年度の研究により、メトホルミンの抗腫瘍作用の詳細なメカニズムとしては活性化CD8T細胞の解糖系の上昇が重要であると考えられる。今後は、メトホルミンと解糖系との関係を明確にするため、CD8T細胞の解糖系の阻害によりメトホルミンの作用がどのように変化するかなどを解析していき、より詳細な分子メカニズム解明の足掛かりとしていく。またこれら作用が既存の免疫療法(がんワクチン、細胞移入療法)の効果の改善につながるかどうかを引き続きマウス腫瘍移植モデルを用いて解析していく。
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Acta Med Okayama
巻: 70 ページ: 327-330