研究実績の概要 |
本年度は、メトホルミンの抗腫瘍作用の臨床応用を見据え、メトホルミンのCD8T細胞機能調節と(1)(2)の免疫療法との併用効果の検討を行った。 1.細胞移入療法との併用 2.がんワクチンとの併用 1については、モデル抗原OVA発現メラノーマ細胞株MO-5担癌マウスとOVA抗原特異的OT-I CD8 T細胞を用いた養子移入の実験においてメトホルミンの効果を評価した。細胞移入前に各種濃度(10,100,1000 μM)のメトホルミンのin vitro処置をOT-I CD8 T細胞に行い、OT-I CD8 T細胞のMO-5腫瘍塊内への浸潤および抗腫瘍作用を観察した。低濃度メトホルミン処置(10,100 μM)によりCD8 T細胞の浸潤が上昇し、浸潤上昇に伴い顕著な腫瘍抑制が認められた。腫瘍内に浸潤したCD8 T細胞はメトホルミン処置によりエフェクターメモリー型(CD62Llow/CD44high)を示し、同細胞集団は顕著なグルコースの取り込み、糖代謝亢進の指標となる細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を示し、前年度の研究結果をサポートする結果が得られた。2については、1と同様の腫瘍を用いてモデル抗原OVAワクチンとメトホルミン自由飲水の併用効果を検討した。ワクチン単独治療と比較し、メトホルミンとの併用により非常に良好な腫瘍縮小効果が観察された。 以上の結果は、メトホルミンによるCD8 T細胞の解糖系調節が抗腫瘍作用に重要であることと共に、メトホルミンの免疫細胞代謝調節が既存の免疫療法の効果の底上げに繋がる可能性を示唆するものである。
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