研究課題/領域番号 |
16K18459
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
内堀 亮介 自治医科大学, 医学部, 講師 (20458285)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キメラ抗原受容体 / CAR / 養子免疫療法 / 多発性骨髄腫 / CD269 / BCMA |
研究実績の概要 |
高齢化社会の進展とともにがんの罹患率ならびに死亡率は益々増加傾向にある。多発性骨髄腫(multiple myeloma)も高齢化社会の到来とともに増加傾向が認められてきており、分子標的治療薬(ベルケード、デキサメタゾン)や免疫調節薬(サリドマイド、レナリドミド)の臨床開発が進み治療成績も向上しつつあるが、満足できるとは言い難い。そこで、従来の治療法とはコンセプトが全く異なり、かつ全患者に施行可能な新しい治療法の開発が期待されている。 近年、遺伝子改変T細胞を用いた養子免疫遺伝子療法、特に腫瘍などの標的細胞を特異的に認識する抗体とT細胞受容体(T-cell receptor; TCR)のシグナルドメインを遺伝子工学的に結合したキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor; CAR)に注目が集まっている。特にヒトCD19特異的CARを用いた臨床研究が盛んに行われており、高い治療有効性が認められている。骨髄腫細胞を標的としたCARを用いることで、従来の治療には反応が乏しいような症例でも有効な治療法になる可能性があり、再発・難治性の多発性骨髄腫の治療にも期待が持てる。ヒト骨髄腫細胞は一般的にCD19陰性の細胞集団であるため、骨髄腫細胞で特に強く発現しているがB細胞系以外の細胞(造血幹細胞も含む)には発現が認められていないCD269(B細胞成熟抗原BCMA、TNFRSF17としても知られる)に着目した。 本研究では、多発性骨髄腫の克服に向けた中核となる新規治療法の開発を目指し、ヒトCD269特異的CAR発現Tリンパ球を作製して担がんマウスの治療実験行い、その治療有効性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はCD269-CARの機能解析と骨髄腫モデルマウスの作製と病態の解析を行う計画であった。 CD269-CARの機能解析では、ヒトCD269特異的CARを搭載した一過性のレトロウイルスベクター(VSV-Gでシュードタイプ化)を作製し、これをPG13細胞に遺伝子導入して、レトロウイルスベクターを安定に産生するシングルクローン化したを樹立する。このPG13細胞培養上清を用いて健常人由来リンパ球に人CD269特異的CARを遺伝子導入すると、5割~6割の遺伝子導入効率を得ることが出来た。骨髄腫患者由来のリンパ球でもほぼ当程度の遺伝子導入効率であった。 骨髄腫モデルマウスの作製と病態の解析では、免疫不全マウス(NOGマウス)にルシフェラーゼ遺伝子で標識した骨髄腫細胞(U266またはRPMI8226)を5×10^6個投与し、6週間飼育することで全身の骨髄内にて骨髄腫細胞の生着と増殖が観察された。このマウスの血中には遊離軽鎖(フリーライトチェイン)が検出されると共に、大腿骨の破壊も確認され、ヒトの骨髄腫の病態に類似したモデルマウスを作成することができた。造血機能については、骨髄内での造血が阻害された影響と思われるが、脾臓や肝臓などでの髄外造血が更新したためか正常マウスと担がんマウスで有意な違いは認められなかった。 以上の結果をもとに、次年度から開始を想定していた治療実験を前倒しして開始した。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄腫モデルマウスにCD269-CARを発現するリンパ球を投与し、生体イメージング装置を用いて腫瘍の縮小を確認する。そして、適当なタイミングで主要な臓器(現時点では採取が容易な胸骨を想定)を採取して、免疫染色や、ゲノムDNAを抽出してヒトゲノムの混入率の測定なども行う。腫瘍の残存は一般的に免疫染色等で確認されることが多いが、本研究ではマウス由来ゲノムDNAとヒト由来ゲノムDNAを区別して検出できる定量的PCRを行うことで、より微小な残存腫瘍をも検出する。また、骨髄腫モデルマウスの血中ヒト遊離軽鎖量と腫瘍量の相関性を検証し、治療有効性を様々な角度から評価する。さらに、CD269-CAR投与によって大腿骨等の破壊が改善されるか、骨の構造解析を行って確認する。時間的な余裕がある場合には、CARの陽性率と治療効果の相関についても検討を行い、治療に必要なCAR発現リンパ球の投与量について基礎データを収集する。さらに、治療マウスにおいては長期飼育を行って再発の有無について確認を行い、治療効果の持続性についても評価する。 また、骨髄腫患者由来の末梢血リンパ球を用いて同様の実験を行い、実用化に向けて今後必要となる課題を洗い出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が想定よりも順調に進行し、試薬等の使用量が予定よりも少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
治療実験には大量の遺伝子改変リンパ球が必要になるため、その培養に必要な試薬類の購入に使用する。
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