研究課題/領域番号 |
16K18460
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
田中 義久 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20648703)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | キナーゼ活性化 / 癌細胞死 |
研究実績の概要 |
現在、癌に対する分子標的薬にはキナーゼ阻害剤が数多く占めているが、新規低分子化合物CMB-236にはキナーゼを活性化する作用を持っており、キナーゼの活性化によっても癌細胞死を誘導できるとなれば新たな視点での創薬が可能となると考えている。本年度の研究の目的は、新規低分子化合物CMB-236のキナーゼに対する活性変化の網羅的な解析および、癌細胞株に添加した際の細胞内シグナルネットワークの変化を質量分析機を用いて網羅的に解析することである。キナーゼは500種ほど知られているが、196種のキナーゼに対して評価を行ったところ、67種のキナーゼに対して活性化作用が見られ、その中の43種はチロシンキナーゼであった。また69種のキナーゼに対しては阻害作用が見られた。CMB-236は特に受容体チロシンキナーゼに対して強い活性化作用を持つことがわかった。チロシンキナーゼは通常、細胞増殖、細胞移動および細胞生存などに関わるシグナルである。低分子化合物によるチロシンキナーゼの活性化がどのように細胞死を誘導しているのか、そのメカニズムの解析は今後の課題となる。次に、CMB-236を癌細胞株に添加した後に、細胞株からリン酸化タンパク質を抽出し、質量分析機を用いてリン酸化タンパク質の変化をコントロール群と比較して網羅的に解析した。一度の解析で約1000種のペプチドのリン酸化の変化を測定することができた。特に細胞内骨格タンパク質や熱ショックタンパク質のリン酸化が大幅に変化していた。詳細な解析は今後の課題であるが、CMB-236による受容体チロシンキナーゼの活性化が、細胞内シグナルネットワークに大幅な変化をもたらしていると考えられる。今後、網羅的な解析により得られたデータと詳細な生化学的なデータを照らし合わせ、CMB-236による細胞死誘導メカニズムを解析し、抗癌剤として有用かどうか検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
キナーゼプロファイルおよびリン酸化プロテオミクスによる網羅的な解析により得られたデータと、ウエスタンブロットなどの詳細な生化学的データおよび蛍光免疫染色などによる形態学的特徴を照らし合わせることでCMB-236による細胞死誘導シグナルを検証していく。また細胞死の特徴を明らかにすることでその上流の因子を予測し、チロシンキナーゼの活性化との関連性について推測していく。予想されたシグナルが細胞死に関与しているかどうかは、阻害剤やsiRNAを用いることで細胞死を妨げることができるかどうか検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度研究において十分な成果が得られたため、わずかであるが来年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
生化学的実験の物品費に使用
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