研究実績の概要 |
本研究の目的は、原発性肺癌において認められている複数のHER2遺伝子変異を細胞株に導入して、HER2阻害剤の感受性を検討し、変異毎の最適な阻害剤を明らかにすることである。まず、3つの挿入変異、YVMA776-779、G776VinsC, GSP780-783をBa/F3細胞(インターロイキン3依存性に増殖するマウスのproB細胞)に遺伝子導入しました。HER2に対してリン酸化阻害活性を有するアファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、ネガティブコントロールとしてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)のエルロチニブを用いた。また、EGFR-TKI耐性に対しても阻害活性を有する第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブ(臨床使用されている)も用いた。 YVMA776-779、G776VinsCのBa/F3導入細胞株に対する阻害活性を測定した。IC50をアファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブの順に記載する。 YVMA776-779(nM):4, 0.6, 107, 4140, 68 G776VinsC (nM):0.2, 30, 0.2, 0.2, 330, 3.8 ラパチニブは他のHER2阻害剤よりも阻害効果が低かった。また、オシメルチニブはHER2に対して阻害活性を示さないことが報告されているが、HER2変異に対して阻害活性を示した。変異特異的な効果を有している可能性がある。これは新しい知見であるが、さらなる検証を必要とする。
|