研究課題
腫瘍浸潤リンパ球における、PD-1、TIM-3、BTLA、LAG-3分子の発現を検討した結果、末梢血と比較し、PD-1陽性リンパ球、TIM-3陽性リンパ球の割合が有意に多かった。次に、局所浸潤リンパ球のPD-1、TIM-3発現を指標にしたT細胞の機能解析を行った。その結果、PD-1陽性TIM-3陽性 CD8 T細胞はCD27及びKi-67の発現が維持されていたが、PD-1陰性TIM-3陽性 CD8 T細胞では、CD27およびKi-67の発現が低下していた。一方で、Annexin VはTIM-3陽性 CD8 T細胞で強く発現していた。これらのことより、T細胞上のPD-1分子の発現はT細胞の活性化状態を示し、TIM-3分子の発現はT細胞の疲弊を示していると考えられる。次に、TIM-3のリガンドであるGalectin-9によるT細胞クローンのアポトーシス誘導を検討した。TIM-3陽性の抗原特異的T細胞クローンにリコンビナントGalectin-9蛋白を添加するとGalectin-9の濃度依存性にT細胞はアポトーシスに陥った。アポトーシスは抗Galectin-9抗体および抗TIM-3抗体で阻止された。次に、肺癌細胞株におけるPD-L1およびGalectin-9の発現をフローサイトメトリー法で検討したところ、PD-L1は主に細胞表面に、Galectin-9は細胞内に発現していた。またPC-9およびOU-LC-SKをAfatinib (10nM)で処理、非処理した結果、Afatinib で処理したPC-9の培養上清でGalectin-9が有意に高かった。また健常人および患者血清と比較し、癌性胸水においてもGalectin-9が有意に高かった。一方で、PD-L1はほとんど検出されなかった。このことは、腫瘍に豊富に存在するGalectin-9が腫瘍死によって局所に大量に放出され、放出されたGalectin-9によって腫瘍局所に浸潤するTIM-3+ T細胞がアポトーシスに陥ることを示唆している。腫瘍浸潤リンパ球において、PD-1/PD-L1および、TIM-3/Galectin-9経路が重要であることが本研究で明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
肺癌局所における免疫チェックポイント分子によるT細胞機能の抑制を明らかにできた。
今後、これらの因子と予後との関連を、臨床検体を用いて解析する予定である。
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J Immunother
巻: epub ページ: epub
10.1097/CJI.0000000000000162.
Cancer Immunol Res
巻: 12 ページ: 1049-1060