研究課題/領域番号 |
16K18467
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
大槻 貴博 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (10593642)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | C型肝炎 / 治療ワクチン |
研究実績の概要 |
HCV非構造蛋白質領域を発現する組換えワクチニアウイルスrVV-N25の作用機序を解析するために本年度は、1) HCV抗原排除に関与するHCV遺伝子の同定、2) HCVトランスジェニックマウスへのDNA/rVV prime-boost vaccine接種によるウイルス抗原排除効果の検討、3) 安全性改善のための点変異導入型rVV-N25mut作成とそのウイルス抗原排除効果の検討、4) HCV持続感染ツパイを用いたrVV-N25, rVV-N25mutによるウイルス抗原排除効果の検討を計画した。この内、1), 2)については、HCV遺伝子をコードするDNAワクチンおよびrVVとのprime-boost接種によりHCVトランスジェニックマウス肝臓内ウイルス抗原が、rVV-N25単独接種と比較して有意に減少する事がわかった。興味深いことにDNAワクチンとrVV-HCVとの組合せは構造蛋白質をコードするDNAワクチンと非構造蛋白質をコードするrVV-N25との組み合わせだけでなくコードする領域が逆の組み合わせでも肝臓内ウイルス抗原を減少させることがわかった。現在ウイルス抗原減少に関与するHCV遺伝子領域を決定するために各HCV遺伝子領域をコードするDNAワクチンを作製している。3)についてはNS3のserine protease、NTPase/Helicase, NS5BのRNA依存性RNA polymerase活性の消失変異を入れたrVV-N25m3はウイルス抗原を発現しなかった。Serine protease変異を入れたrVV-N25m2はrVV-N25に比べ良く発現した。rVV-N25m2はDNA/rVVprime-boost接種により肝臓内ウイルス抗原を減少させたが肝臓への炎症細胞浸潤を強く誘導する事がわかった。4)ツパイについてはHCV感染実験を行わなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施計画を予定していた1) HCV抗原排除に関与するHCV遺伝子の同定、2) HCVトランスジェニックマウスへのDNA/rVV prime-boost vaccine接種によるウイルス抗原排除効果の検討、3) 安全性改善のための点変異導入型rVV-N25m作成とそのウイルス抗原排除効果の検討および4) HCV持続感染ツパイを用いたrVV-N25, rVV-N25mによるウイルス抗原排除効果の検討については、HCV持続感染ツパイへの治療ワクチン効果の検討のみ実施出来なかったが、他の項目については実施計画通りに進行した。DNA/rVVのprime-boost接種により効果的に免疫賦活化し、免疫抑制が解除され、ウイルス抗原を排除できる事がわかった。興味深いことにこの免疫抑制解除にはDNA/rVVとでHCVの構造蛋白質、非構造蛋白質の別々の領域をコードしていることが重要であることもわかった。当初予定していた安全性を改善するために作製したrVV-N25m2については、DNA/rVV prime-boost接種により肝臓内ウイルス抗原は減少させるが炎症細胞浸潤を誘導するため、HCV治療ワクチンの候補からは除外した。またDNA/rVVのどの組合わせ領域が肝臓内ウイルス抗原の排除のために重要かが決定していないのでHCV持続感染ツパイへの治療ワクチン実験が進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでrVV-N25単独接種では肝臓内ウイルス抗原排除が難しかったHCVトランスジェニック老齢マウスでもコードするHCV遺伝子領域が異なるDNA/rVVでprime-boost接種することで有意に肝臓内ウイルス抗原を排除できることがわかった。構造蛋白質あるいは非構造蛋白質などHCV遺伝子の領域が異なるDNA/rVVのprime-boost接種がウイルス抗原を排除する免疫を賦活化することに重要であることが示唆された。今後はどの領域が抗原排除に関与する免疫の抑制解除に関与するか明らかにするために、HCV構造蛋白質、非構造蛋白質の各遺伝子を発現するDNAワクチンを作成し、HCV構造蛋白質発現rVV-CN2および非構造蛋白質発現rVV-N25とのHCVトランスジェニックマウスへのprime-boost接種によりウイルス抗原排除に関与する遺伝子領域を決定する。さらにHCV持続感染ツパイを用いた実験からDNA/rVV prime-boost接種による肝臓内ウイルス抗原の排除を指標とした治療ワクチンの効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はHCV持続感染ツパイを用いた実験及び海外研究発表がなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度にHCV持続感染ツパイ実験および海外研究発表に使用する。
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