C型肝炎ウイルスは細胞性免疫を抑制し持続感染が成立するが、評価できる小モデル動物がないため治療ワクチンがない。我々はpoly(I:C)投与により任意の時期にHCV構造蛋白質CN2を発現するトランスジェニック(Tg)マウスと、HCV全蛋白質CN5発現Tgマウスを作製した。これらのマウスはpoly(I:C)投与後、Cre-loxPシステムによりインターフェロン応答性にHCV蛋白質を発現するため、正常な免疫応答下で急性、慢性C型肝炎、肝硬変、肝細胞癌を呈する。poly(I:C)投与3ヶ月後の慢性肝炎を呈するCN2マウスにHCV非構造蛋白質N25発現組換えワクシニアウイルス(rVV-N25)を皮内接種したところ、C型肝炎の病態は正常化し、細胞性免疫の抑制解除と同時に再賦活化することで肝臓内ウイルス抗原を特異的に排除することを見出したが、poly(I:C)投与9ヶ月以上の長期抗原暴露された老齢CN2マウスやCN5マウスでは、rVV-N25の単独接種では治療ワクチン効果が弱く、より強力な細胞性免疫の抑制解除と再賦活化が必要であった。これまでにワクチン領域(CN2またはN25)の異なるDNAワクチンとrVVとのprime-boost接種法により強力な細胞性免疫を誘導できる事を見出している。そこで最も治療ワクチン効果の弱い老齢CN5マウスに、DNA/rVV prime-boost接種し、病態正常化、ウイルス抗原排除効果を調べたところ、N25-DNA/rVV-CN2との組合せで肝臓内ウイルス抗原が減少傾向を示すことが明らかとなった。以上のことから、DNA/rVV prime-boost接種法により強力に細胞性免疫の抑制のかかった老齢CN5マウスでも治療ワクチン効果を示すことが明らかとなった。
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