本研究の目的はクロマチン上のタンパク質ポリADPリボシル化修飾がクロマチン高次構造にどのような影響を与えるのかを明らかにすることである。当初の計画では、クロマチン高次構造を既存のChIA-PETやMNase-seq等の手法を用いて解析することを目標としていたが、初年度の時点において昨今の研究動向からみて、ポリADPリボシル化など”特定のタンパク質による多点間クロマチン相互作用を1分子の解像度で検出可能にする新手法”を開発することが望ましいと判断された。昨年度までに、新技術に必要な基礎技術(マイクロ流体チップの開発、微小液滴への細胞・ビーズ封入技術の確立、アダプター付加オリゴビーズの設計)の開発が完了し、これらを組み合わせて一連の実験系の最適化を行い、次世代シーケンサーを用いて得られたDNAライブラリのシークエンス解析を行うことに成功した。最終年度には、出力された大量のデータを解析しクロマチン高次構造を明らかにするための情報学的解析プログラムの開発も完了し、実際の細胞内における相互作用を検出することに成功した。ChIA-dropと名付けたこの手法は、ChIA-PETが可能にした”着目したタンパク質が介在するクロマチン高次構造の解析”を、1分子の解像度で、多点間の相互作用を検出できるようにした初めての方法である。さらにChIA-dropの検出感度と実験の利便性を改善するために反応系の改良を進めるとともに、ポリADPリボシル化修飾によるクロマチン高次構造の解析を行った。
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