生物の種内には突然変異のプロセスによって生成されたゲノムレベルでの様々な多様性が見られる。これらの突然変異がどう表現型に影響するか、そして遺伝的な多様性がどう表現型の多様性と結びついているかを明らかにすることは生物学における中心的な命題である。そこで大量の集団ゲノムデータを解析することでこの命題に取り組むのが本研究課題のテーマである。本研究課題を開始して以来、我々は北海道の牧場より数百頭の競走馬のサンプルを入手し、数十万の一塩基多型を同定した。競走馬は毎世代少数のオスに対して非常に強い人為選択がかかっており、また表現型や遺伝病に関する知見が充実しているため、遺伝学研究を行う上でユニークなモデルとなりうる。本年、これら数百頭の大量の塩基多型データを用いた集団ゲノム解析を行うことで様々な知見を得ることができた。まず、人為選択のターゲットになり、表現型の多様性と深く関係していると考えられる領域を複数同定した。さらに、ここ100-200年のみならず、もっと以前に頻繁に行われていた近親交配が現在の遺伝的多様性の欠如に結びついていることがわかった。現在これらの研究結果をまとめた投稿論文を国際誌に投稿中である。また、生物の遺伝的多様性に深く関係している反復配列の進化に関するモデルを提唱した論文も国際誌に投稿した。
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