研究課題/領域番号 |
16K18472
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菅野 茂夫 京都大学, 理学研究科, 研究員 (60726313)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゼニゴケ / ゲノム編集 / CRISPR / X染色体 |
研究実績の概要 |
ゼニゴケのX染色体の配列情報データをまとめ、X染色体ゲノム全体もしくはcoding sequenceに対して、網羅的にgRNAを設計した。既存のgRNA設計ソフトウェアであるCasFinderを用いた場合は、X染色体ゲノム上では、広くても500塩基程度の間隔に1個のgRNAを設計することができた。一方、coding sequenceに関しては、gRNAを一つも設計されない遺伝子も多数含まれており、それら遺伝子に関しては、手動でgRNAの設計を行った。以上の過程を経て、X染色体上の遺伝子群を破壊するためのgRNAのデザインはほぼ完了したといえる。 X染色体ゲノムの欠失によるスクリーニングを行う前に、欠失がどの程度の頻度で起こるか、MpNOP1遺伝子をターゲットとして実験を行った。様々な間隔でgRNAを設計し、それぞれのgRNAを異なるゲノム編集ベクターにクローニング後、アグロバクテリウムに導入し、ゼニゴケに複数種類のアグロバクテリアを共感染させる実験を行った。その結果、二種類のアグロバクテリウムを共感染させ、一種類の薬剤で選抜した場合、20系統選抜しても、数kbp欠失するような形質転換ゼニゴケは取得できなかった。一方、異なる二種類のゲノム編集ベクターの共感染株のみ取得できるように、二種類のgRNAカセットをそれぞれ別の薬剤耐性マーカーを含むゲノム編集ベクターに導入し、二種類の薬剤で選抜した場合は、数系統に1個体は、4.5kbpを欠失するような株を取得できた。以上の結果から、ゼニゴケにおいて欠失を誘導するには、二種類のgRNAが同時に確実に発現するための工夫が必要であることが示唆された。上記の実験は、すべて切断面法を用いてアグロバクテリウムの感染を行ったが、欠失の誘導はみられたため、欠失導入には、切断面法の利用で十分であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
網羅的gRNAの設計や、欠失の誘導には成功しているものの、ゲノム編集によるfeminizerのスクリーニングにいたっていない。生殖器官に関するスクリーニングを急ぐ必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
in silicoでのgRNAのデザインが完了しているので、申請書の研究計画にしたがって、網羅的遺伝子破壊を速やかに実行する。一方、研究計画時には判明していなかった事実として、gRNAを二種類以上同時に発現させることが、欠失誘導に重要であるとわかったため、gRNAを二種類以上同時に発現させるためのゼニゴケゲノム編集用ベクター構築を行う。欠失を効果的に導入する方法を確立する。先行して行う、網羅的遺伝子破壊の実験スキームに、遺伝子の欠失をX染色体上で網羅的に行う。
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