研究課題/領域番号 |
16K18474
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川口 修治 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00525404)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HLA / ジェノタイピング / 次世代シークエンサー / ソフトウェア / マルチプレックスPCR / HTLV-1 / 関連解析 / 遺伝統計学 |
研究実績の概要 |
次世代シークエンサーで得られたデータからHLAアレルをタイピングする手法HLA-HDを開発し、既存手法よりも高いタイピング精度を得た。また、HLA-Aに対して偽陽性のタイピング結果を引き起こす要因となるHLA-A like psuedogene のアセンブリおよびシークエンスに成功し、この遺伝子の影響を取り除くことでタイピング精度が向上した。以上の内容をとりまとめて論文誌に投稿し、採択に至った(Human Mutation in press)。次にHLA-A、-C、-B、-DRB1、-DQB1、DPB1の6遺伝子全長の塩基配列決定のためのLong-PCR用マルチプレックスPCRプライマーセットを開発し、特許出願をおこなった。 上記の開発技術を用いて、全国の共同研究機関で採取し京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センターで保管しているHTLV-1関連脊髄症(HAM)患者313検体と無症候性キャリア群(対照群)315検体のDNAサンプルに対しMiSeqを用いたHLA遺伝子シークエンスとアレルタイピングを行なった。また、この実験における大量サンプルの同時シークエンスを可能にする新規バーコードセットを開発した。これにより6種のHLA遺伝子に対して、市販のタグ付け方法の最大数384検体を超える818検体の同時シークエンスに成功した(他疾患の検体を含む)。旧来法でのシークエンス検体とあわせて1,583検体のHLAタイピング結果に対して関連解析した結果、HAMと無症候性キャリアの間で有意な頻度差が生じる感受性HLAアレル、さらにアミノ酸残基位置およびアミノ酸の種類を同定した。 イントロンを含めた完全長配列の解像度にHLA解析手法を展開するために、シークエンス結果からの完全長配列アセンブリ手法のプロトタイプ開発を進めた。現在は手法の検証作業の段階まで来ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までにHLA解析に向けた基礎技術がおおよそ整った。更に予定通り、包括的HLA解析に必要な大規模サンプルにおけるHLA遺伝子領域のシークエンスデータが揃った。これにより、次年度以降は滞りなく解析法の開発に進めると考えている。また従来の限界を超える多検体の同時シークエンスを達成できたことも大きい。この開発バーコードはHLA遺伝子のシークエンス以外にも既に導入しており、この点においては本課題の目的を超えての成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き完全長配列が不明となっていたHLAアレルに対する配列決定を進める。これまでのHLAタイピング結果を踏まえると、HLAデータベースの不備によるタイピング不一致やアレル頻度のずれは今後の解析における大きな問題になってくると予想される。そこで、HLAの完全配列決定と同時にHLAリファレンスの再整備もおこなう。整備したリファレンスを基に、imputationを伴わないHLA全長を用いた包括的関連解析手法の開発を進める。これまでの実績で高効率・低コストでのHLAシークエンス・タイピング法が確立したので、今後の開発と手法の検証に関してはHTLV-1関連疾患以外の難病疾患領域にも拡張して行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
低コストでの大規模HLAシークエンス解析法を確立できたため、必要な購入試薬が当初の予定より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の論文投稿にかかる費用。 国際学会発表(1回)と国内学会発表(2回)における旅費。 研究データ保存用ストレージの購入。
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