研究課題/領域番号 |
16K18476
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
島津 忠広 国立研究開発法人理化学研究所, 眞貝細胞記憶研究室, 専任研究員 (10618771)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質翻訳後修飾 / メチル化 |
研究実績の概要 |
1. IDH2メチル化は3-メチルヒスチジンである:ヒスチジンのメチル化には1-メチルヒスチジンと3-メチルヒスチジンの2種類がある。本年度のアミノ酸成分分析による解析から、IDH2のヒスチジンメチル化が3-メチルヒスチジンであることが判明した。 2.抗IDH2メチル化抗体の作製:メチル化の型が判明した後、修飾特異的な抗体を作製した。同抗体の作製はモノクローナル抗体研究所の協力で進めた。作製したモノクローナル抗体は、in vitroでのIDH2メチル化をウエスタンブロットで感度よく検出することが出来た一方で、培養細胞におけるIDH2のメチル化レベルを検出した場合、バックグラウンドが高く、免疫沈降による精製などが必要であると考えられる。今後、内在性のIDH2メチル化を検出する場合、抗体の使用条件などについてより詳細な検討が必要となる 3. 抗METTL9抗体の作製:内在性METTL9を認識する抗体が必要になるが、試した限りでは市販の良い抗体が無かったため、METTL9に対する抗体を作製した。バキュロウイルス系で発現精製したHis-METTL9タンパク質を抗原としてウサギへの免疫後、採血を行い全血清を取得後、His-METTL9を結合させた抗原カラムに供することで、METTL9に特異的な抗体を取得した。しかしながら、本抗体は過剰発現したMETTL9を検出可能である一方で、内在性のMETTL9の検出は出来なかった。今後のさらなる検討が必要である。 4. Mettl9ノックアウトマウスの作製:CRISPR-Cas9のゲノム編集技術を用いて、Mettl9ノックアウト(KO)マウスを作製した。ホモのノックアウトマウスは正常に出生し、体重なども顕著な差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の達成目標は1. メチル化の分子機構の解明 2. メチル化の生理的な意義の解明 3.癌疾患などとの関係の有無 を明らかにすることにある。そのうち1については当年度の研究によりかなり解明が進んだ。しかし、2と3については当初の予想より進捗が遅れている。その理由としては作製した修飾特異的抗体が内在性のメチル化を検出するのが困難であったこと、さらにIDH2を免疫沈降できる抗体がなかったことも大きく影響している。また、KOマウスにおいても胎生致死、低体重、行動異常などといった顕著な表現型は今のところ見られなかった。次年度は培養細胞レベルでの実験から、タグを融合させたIDH2変異体におけるメチル化と代謝、特に2-HGの産生について調べることで、細胞レベルでのメチル化の意義を明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初は動物個体でのMETTL9およびIDH2ヒスチジンメチル化の意義を解明することを目指したが、内在性のIDH2のメチル化を検出できる抗体が作製できていないことと、残りの研究期間の関係から、まずは細胞レベルでのメチル化の意義を解明することを優先し、残りの研究期間で動物個体レベルでの意義を明らかにすることとしたい。具体的にはまず、培養細胞にFLAGタグを融合したIDH2を安定発現させた細胞株を樹立し、その細胞株での代謝、特に2-HG産生に変化があるかを明らかにしたい。その後、研究期間が許す限りにおいて、個体で免疫沈降できるIDH2抗体を作製するか、IPせずに直接IDH2メチル化を検出できる抗体を作製するとともに、個体でのメタボローム解析などを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画より研究の進捗がやや遅れているため、動物個体での実験計画やメタボローム解析での支出が当該年度ではなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、本来の支出計画に加えて、当該年度に出来なかった細胞レベルでのメタボローム解析や、必要に応じて動物レベルでの解析や抗体作製も行っていきたい。
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