研究実績の概要 |
1. メチル化の分子機構:ヒスチジンのメチル化には1-メチルヒスチジンと3-メチルヒスチジンの2種類がある。アミノ酸成分分析による解析から、METTL9によるIDH2のメチル化が3-メチルヒスチジンであることが判明した。 2.抗IDH2メチル化抗体の作製:同抗体の作製はモノクローナル抗体研究所の協力で進めた。作製した抗体はin vitroでのIDH2メチル化をウエスタンブロットで感度よく検出することが出来た一方で、内在性IDH2のメチル化を培養細胞で検出した場合、バックグラウンドが高く使用するのに不適であった。抗METTL9抗体の作製:His-METTL9タンパク質を抗原としてウサギへの免疫後、抗原カラムに供することで、METTL9に特異的な抗体を取得した。抗体は過剰発現したMETTL9を検出可能である一方で、内在性のMETTL9の検出は出来なかった。 3. Mettl9ノックアウトマウスの作製と表現型解析:CRISPR-Cas9のゲノム編集技術を用いて、Mettl9ノックアウト(KO)マウスを作製した。ホモのKOマウスにおいても胎生致死、低体重、行動異常など顕著な表現型は観察されなかった。 4. 培養細胞におけるヒスチジンメチル化の生理的意義:培養細胞にFLAGタグを融合したIDH2を安定発現させた細胞株やshRNAによりMETTL9をノックダウンした細胞株を樹立し、代謝変化、特に2-HG産生に変化があるかを調べたが顕著な差異は認められなかった。さらにKOマウス血清中に含まれる代謝物を解析したが、2-HGの産生やa-KG, イソクエン酸の顕著な違いは見られなかった。 本研究を通じてMETTL9がヒスチジンを3-メチル化する酵素であること、その基質がIDH2であることが明らかとなったが、生理的な意義については培養細胞レベル、マウス個体レベルで現在も引き続き解明を進めている。
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