研究課題
本研究計画では、新規ヒストンバリアントを軸にしたクロマチン動態の解析によって、細胞分化にともなう遺伝子選択機能の解明を目的とする。高等生物で特徴的に発達したクロマチンを介する複雑な遺伝子発現制御のメカニズムを解明するためには、生体におけるヌクレオソーム再編成の実態と機能的意義を明らかにする必要がある。我々は2015年に、計算機による遺伝子探索法を開発し、新規14種のマウスおよびヒトのヒストン亜種(バリアント)遺伝子を同定した。遺伝子改変細胞を使った実験から、その一部バリアントのクロマチンへの取り込みが、細胞分化過程における遺伝子発現パターンを変容させることを明らかにした。しかし、わずかなアミノ酸の違いがもたらす分子メカニズムは不明のままであった。そこで本年度は、ヒストンの新規バリアントが果たす固有の機能を中心にして共同研究の成果を発表してきた。ヒストンバリアントの選択性については、精巣特異的ヒストンバリアントH3t(Cell Rep. 2017)、骨格筋特異的ヒストンバリアント(H3mm7)に着目し解析を行った。ヒストン修飾の面からは、新規ヒストン修飾をを発見し論文報告した。一方、ヒストンバリアントは種固有のものが多く、各動物種ごとの解析が欠かせない。そこで、本プロジェクトではヒト固有のバリアントについて、ヌクレオソーム形成能の解析やエピゲノムプロファイリングより、各ヒストン固有のクロマチン構造をゲノムワイドに明らかとし、本成果については論文投稿中である。
1: 当初の計画以上に進展している
新規マウスH3バリアントがもたらす骨格筋分化に特徴的なクロマチン構造の解析を順調に進めることができている。新規に同定したヒト・マウス新規バリアントについての共同研究成果もあがっており、当初の計画以上に順調に進展している。
マウスにおける新規H3バリアントのひとつが、骨格筋分化の過程に伴った遺伝子の発現を調整している可能性を見出しており、当面はさらなるデータ取得と解析の計画を進めながら、最終的な論文発表を目指す。また、当研究の過程で新たに創出してきたトランスクリプトーム解析技術や、ヌクレオソーム解像度のクロマチン構造解析手法についても、論文発表を目指して同時に計画を進める。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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http://tx.bioreg.kyushu-u.ac.jp