研究課題/領域番号 |
16K18480
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
山崎 朋人 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 特別協力研究員 (70512060)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | mRNA-seq / sRNA-seq / RIP-seq / RNA silencing |
研究実績の概要 |
平成28年度は研究計画通り、野生型株とmiRNA変異株を用いたmRNA-seq解析、sRNA-seq解析を行った。 まずAGO3/miRNA複合体によって切断されるmRNAの検出するために、栄養細胞、配偶子細胞、接合後に設定した、クラミドモナスの生活環の中の7つの特徴的な場面において、野生型株とAGO3変異株からのRNA抽出した。このRNAからmRNA-seqに供するライブラリー作製し、次世代シークエンサー(Hiseq1500)を使ってリードを獲得した。獲得したリードを適切に処理し、edgeRによる統計解析を行った。その結果AGO3変異株で有意に発現量の高い遺伝子を24見出した。この中には性決定領域にコードされる遺伝子も含まれていた。 また、野生型株と複数のmiRNA変異株の栄養細胞からRNAを抽出し、アクリルアミドゲルで小分子RNA分画を得たのち、それを用いてsmall RNAライブラリーを作製し、次世代シークエンサー解析を行ってリードを得た。リードを適切に処理し、miRAプログラムやCLCゲノミックワークベンチを用いてmiRNAの発現量解析した。またゲノム配列へのマッピング結果と野生型株とmiRNA変異株の比較解析によって新規miRNAを同定した。 平成29年度に計画しているRNA immunoprecipitaion-seqを確立させた。この方法は、AGO3によって翻訳が阻害されるmRNA、つまり発現抑制を受けているが野生型株とAGO3変異株ではその蓄積量に差が見られないものを網羅的に探索するための手法である。FLAGタグを付加したAGO3を発現するAGO3変異相補株を使い、細胞の破砕条件、FLAGビーズとの院キューベーション条件、洗浄条件、RNA溶出条件、次世代シークエンサー用ライブラリー作製条件を総合的に検討し、AGO3によって翻訳が抑制されるmRNAを検出できるRIP-seq法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、実施計画通りmRNA-seqとsmall RNA-seqを行った。その結果、接合後にAGO3変異株でのみ発現が上昇する、つまりAGO3によって発現が抑制できなくなってしまった遺伝子群を24見出すことに成功し、またその中には性決定領域にコードされる遺伝子が含まれていたことから、28年度の大きな目標は達成された。またsRNA-seqの解析から、思いがけず未同定のmiRNA、miRNA前駆体が同定され論文発表できた。さらに平成29年度に向けてRIP-seq法の開発を成功させており、次年度に向けた準備も順調に進んだ。 こういったことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、AGO3/miRNA複合体によって翻訳が阻害されるmRNAの検出するために、栄養細胞、配偶子細胞、接合後の、生活環の中の特徴的な場面において、AGO3変異相補株を用いたRIP-seq解析を行う予定である。技術は平成28年度中に確立し、技術的な問題はない。研究代表者が平成29年4月に異動したため、実験設備のセットアップ等で一時的に研究の進捗が遅れる可能性があるが、できる限り早いうちに研究を推進できるよう対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究申請時は高知工科大学に所属し、平成28年度の次世代シークエンサーを用いた解析は、基礎生物学研究所に複数回訪問・滞在して行う計画であった。しかし本研究の申請後に基礎生物学研究所へと移動したため、その分の旅費の使用が相当分抑えられたこと、また規模の大きな研究室へと異動したことで消耗品や酵素類の購入がかなり効率化され、物品費の消費を抑えられたことが主な理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者は29年度に高知大学へと移動したため、基礎生物学研究所への旅費の支出増加が見込まれる。また異動に伴い独立して新しい研究室を立ち上げたため、本研究に必要な試薬類・機器のいくつかを改めて準備する必要がある。これに前年度に消費が抑えられた物品費を当て、計画通りに研究を進める予定である。
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