研究課題/領域番号 |
16K18484
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
安藤 温子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (70761063)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海洋島 / カラスバト / 移動分散 |
研究実績の概要 |
カラスバト亜種の飛翔能力の評価について、共同研究者がこれまでに採取したアカガシラカラスバトのDNAサンプルを入手した。伊豆諸島におけるカラスバトのサンプルについては、これまでに採取した分では数が不足しているため、山階鳥類研究所に提供の打診をしており、前向きな回答を得ている。現地での羽毛採取について、関係者と調査に関する打ち合わせを行い、2017年5月~7月に実施することが決定した。また、形態計測を行う部位に関する打ち合わせを行い、詳細に方法について指導を受けた。アカガシラカラスバトの島間移動パターンの解明については、小笠原諸島父島及び母島において、センサーカメラの設置箇所とGPSロガーの装着について、現地で予備調査を行った。調査方法に関して現地の協力者と打ち合わせを行い、当初の予定よりも規模を縮小する必要があると判断した。小笠原諸島父島において、アカガシラカラスバトとカラスバトの交雑が疑われる個体が発見されたため、マイクロサテライトマーカーを用いた遺伝解析を行い、結果をIsland Biology 2016において発表した。また、2014年に実施した北硫黄島におけるアカガシラカラスバトの生息状況調査に関して、追加的な実験を行い、結果をPacific Science誌に発表した。カラスバト亜種の生態系機能を評価するため、島嶼における種子散布を総括する文献調査を行う運びとなり、関連文献を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA分析用のサンプル採取と関係者との打ち合わせは、概ね順調に進行した。現地での予備調査も実施することができた。しかし、現在小笠原諸島では、アカガシラカラスバトによる殺鼠剤の採食が問題となっており、この対応として殺鼠剤が散布予定の島でアカガシラカラスバトの捕獲等が行われていることから、これらが調査結果に影響を与える可能性があり、本研究に関する現地の協力も得にくい状況となっている。ことため、現地調査の規模を縮小し、その代わりに、これまでに採取した糞サンプルを用いた種子散布の評価など、海洋島におけるカラスバト亜種の生態系機能評価する方向に研究方針を転換する必要があると判断した。この点の準備状況は概ね順調に進行したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
カラスバト亜種の飛翔能力の進化的背景に関する研究については、予定通り形態計測と遺伝構造解析を実施する。センサーカメラとGPSロガーを用いた野外調査については、実施が困難であるため中止する可能性がある。その代わりに、これまで採取した糞サンプルの分析や文献調査により、カラスバト亜種の生態系機能の評価や、島嶼における生物間相互作用を広くとらえた研究に方向転換する必要があると考えている。これについても準備は進行しており、成果が得られると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、小笠原諸島におけるアカガシラカラスバトの島間移動パターンを調査するため、センサーカメラとGPSロガーを購入し、現地調査を複数回行う予定であったが、現地での予備調査及び打合せの結果、調査の規模を縮小する必要性が生じたため、機器の購入及びその後の調査を実施しなかった。現地では、アカガシラカラスバトによる殺鼠剤の採食を防ぐための対応が行われており、調査に影響が出る可能性があった。また、現地での協力も得にくい状況であることから、労力の面からも十分な調査を実施することが困難であると判断された。
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次年度使用額の使用計画 |
現地の状況を確認し、調査が実施できる場合はセンサーカメラとGPSロガーを購入し、現地調査を行う。調査を中止する場合は、より詳細なDNA分析を実施するための試薬や備品の購入に充てる。また、研究の方向性を変更するために必要な調査及び打合せの旅費に使用する。
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