研究課題/領域番号 |
16K18486
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松尾 芳隆 東北大学, 薬学研究科, 助教 (00725252)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リボソーム / mRNA / 品質管理 / 新生ペプチド鎖 |
研究実績の概要 |
細胞内では遺伝子発現の各過程における誤りや外界からのストレスによって様々な異常mRNAや異常タンパク質が合成される。mRNAとタンパク質の品質管理機構は、この様な異常産物を認識し排除することで正確な遺伝子発現を維持している。 mRNA上に連続したレアコドンや連続した塩基性アミノ酸配列などが出現するとリボソームによる翻訳伸長反応が停滞する。細胞はこの翻訳停滞を異常な翻訳と認識し、翻訳中の異常mRNAの分子内切断(NGD; No Go Decay)とその異常mRNAに由来する新生ペプチド鎖の特異的分解機構(RQC; Ribosome associated quality conyrol)を誘導する。新生ペプチド鎖の分解機構であるRQC機構は、E3ユビキチンライゲースであるHel2に依存しており、リボソームタンパク質であるS20の特異的ユビキチン化によって誘導される。また、新生ペプチド鎖は、ペプチジルtRNAの状態で60Sサブユニット上に保持され、その後分解されることが報告されている。つまり、RQC機構の誘導には、ストップコドンに依存しないリボソームのサブユニット乖離が必須であることが示されているが、その分子機構の知見は皆無である。 我々は、Hel2-リボソーム複合体に含まれる因子の探索によって、RQC機構に関与する新たな因子(RQT; Ribosome Quality control trigger factors)を同定した。そこでこれらの因子群が、RQC機構の誘導に必須であるか調べた。その結果、全ての因子がRQC機構の誘導に必要であること、さらに、ストップコドン非依存のリボソーム乖離に関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに見いだされたRQT因子群が全て翻訳停滞に起因する品質管理機構の誘導に必要であることを明らかにし、次のステージであるIn vitroの解析系もおおむね確立している。そのため、今後は、より詳細な機能解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、E3ユビキチンライゲースであるHel2が翻訳伸長過程で停滞したリボソームを認識し、さらにS20をユビキチン化することでRQCの誘導に必須であるサブユニットへの乖離を誘導する可能性を検証している。特に、本研究では、Hel2によるS20のユビキチン化を新規のRQT複合体が認識し、ストップコドン非依存にリボソームを乖離させるモデルを検証することを目的としている。平成28年度中に、全てのRQT因子群が翻訳停滞に起因する品質管理機構の誘導に必要であり、さらにストップコドン非依存のリボソーム乖離に関わっている可能性を示す結果を得ている。そこで平成29年度は、翻訳停滞によって誘導されるストップコドン非依存のリボソーム乖離がRQT因子群によって直接誘導されるか否か、in vitroの系を用いて評価する。
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