研究課題
piRNAは、生殖組織特異的に発現する小分子RNAで、PIWIタンパク質と結合することで、トランスポゾン等の遺伝子発現を抑制している。生殖組織におけるトランスポゾンの転移はゲノムの損傷を引き起こし、卵・精子形成不全や不稔を導くことが分かっている。piRNAは、一次経路とPing-pongとよばれる二次経路により、産生される。本研究において使用したショウジョウバエ卵巣由来体細胞株OSCは、PIWIタンパク質の一つであるPiwiが関与する一次経路のみが発現している。OSCにおける一次経路では、Ybというタンパク質が中核となる細胞質顆粒体Yb bodyがpiRNAの生合成の場であることが分かっており、Yb bodyには、ArmiやVret、SoYbといったタンパク質が局在することが報告されている。しかし、VretやSoYb等の個々のタンパク質の詳細な機能は明らかとなっていない。昨年度までの当研究室の研究により、VretとSoYbはタンパク質同士直接結合することで、相互に安定化していること、一方、VretとArmi、YbはRNAを介して相互作用していることを報告した。今年度は、VretとSoYb等のYb body構成因子の細胞内局在を免疫染色により確認することで、昨年度の結果と一致する結果を得た。さらに、YbやSoYbの持つドメインに着目し、ドメイン毎の変異体を作成することで、YbやSoYbがほかの因子と結合するのに必要なドメインを特定することができた。また、Yb bodyにより生合成されたpiRNAは、Yb bodyに局在する空のPiwiと結合し、piRNA-Piwi複合体を形成し、その後核内輸送因子であるImportinαと結合することで、核内へ移行することも明らかにした。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Nature
巻: 8 ページ: 260-264
10.1038/nature25788.