研究課題
本研究はRNAの高感度質量分析の結果明らかになった新規U1 snRNA代謝物であるU1-tfsの発見に基づき、U1-tfs形成に関わる細胞内代謝機構、それに関係するRNPの品質管理機構を明らかにすることを目的としている。前年度はU snRNAの転写から核外輸送までの間にU1-tfsが形成される可能性が高い事、U snRNAの正常な合成経路に関わる3’-5’エキソリボヌクレアーゼであるTOE1がターゲットできなかったRNAがU1-tfsに代謝される可能性が高いことを示した。本年度は上記事項を踏まえて引き続きU1-tfs形成に関わる3’-5’エキソリボヌクレアーゼの探索を重点的に行った。前年度にクローニングした15種類の3’-5’エキソリボヌクレアーゼを一過的に発現させた時の細胞内局在観察の結果およびU1-tfsが核内で形成される可能性が高いことを基に、核質に局在可能な10種類のタンパクを候補とし、ドキシサイクリン誘導発現による影響、候補タンパク単独でのノックダウンおよびTOE1と組み合わせたダブルノックダウンによる検討を行いERI1タンパクがU1-tfs形成に関わる可能性を示す幾つかの傍証を得た。ERI1タンパクが直接U1-tfs形成に関わる酵素である可能性については検討の余地を残すところであるが、少なくともERI1タンパクがU snRNA/RNPの生合成に関わることは明らかであると考えられる。本研究の成果は、U1-tfsの形成に着目することによって、これまでにU snRNAの代謝に関与する事が知られていなかったERI1タンパクが生合成段階におけるU snRNA/RNP代謝経路に関与することを明らかにしたことにより、細胞内RNAの代謝に関する基礎生物学的な問題に対して新たな知見を与えるものと考えられる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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