研究課題
本研究は、乳酸菌に存在する特異なRNAの存在意義を明示し、そのRNA分子の生体への影響を解明することを目的としています。平成28年度は、以下の項目に重点を置き研究することを目標とし、幾つかの成果をあげることができました。(1)乳酸菌tRNAIle(UAU)様分子がグリシルtRNA合成酵素(GlyRS)にどう認識されているか→tRNAIle(UAU)変異体を作成し、GlyRSの基質認識に必要な塩基を同定することができました。(2)tRNAIle(UAU)様分子が翻訳に利用されているか→tRNAIle(UAU)はアミノアシル化効率が非常に悪く、伸長因子との結合活性解析を行うことが困難でありました。リボザイムにより、強制的にアミノアシル化することで、活性測定を行うことができるようになりました。結果、アミノアシルtRNAIle(UAU)の翻訳伸長因子との複合体は検出できず、このRNAが翻訳に利用されている可能性は低いことが示唆されました。(3)tRNAIle(UAU)様分子が結合するタンパク質(もしくはその他の結合分子が)存在するか→現在、結合分子を同定すべく、解析系を確立しているところです。(4)tRNAIle(UAU)様分子の構造と生理的機能→酵素処理により得られたtRNAIle(UAU)のRNA断片を解析したところ、通常のtRNA構造をとらないことが判明しました。以上の研究に加え、遺伝子破壊株の解析を進めております。また、現在、平成27年度までの研究結果と、(1)(2)の結果を論文にまとめているところです。
2: おおむね順調に進展している
論文投稿に着手しているところであり、国内学会、国際学会で発表することができています。しかしながら、遺伝子破壊株がまだ得られておらず、このRNAの生理的意義を示すことに至っていないことから、「おおむね順調に進展している」と評価しました。
平成29年度前半までの論文採択を目指します。また、平成28年度計画を継続するとともに、乳酸菌内でのタンパク質発現系の構築を行います。さらに、平成28年度に進めた研究結果から、tRNA様分子は通常のtRNA二次構造をとっていない可能性が浮上しましたので、このRNA構造に着目し、機能解明することを目標に足したいと思います。
解析機器使用料、および受託解析料の支払いにあてるように予算を残しておりましたが、サンプル調製が間に合わず、予算執行期間内に解析をすることができませんでした。
解析機器使用料、および受託解析料の支払いにあてたいと考えております。また、プラスチック消耗品が不足しておりますので購入を予定しております。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件) 図書 (1件)
Genes to Cells
巻: 21 ページ: 740-754
10.1111/gtc.12376