研究課題/領域番号 |
16K18495
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
白土 玄 国立遺伝学研究所, 分子遺伝研究系, 特任研究員 (80625533)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | noncoding RNA |
研究実績の概要 |
本研究課題「染色体分配を制御するヒト新規long non-coding RNAの解析」の目的は、ヒトの紡錘体形成及び染色体分配を制御する新規long non-coding RNA(lncRNA)、CENNA1の機能と分子メカニズムの解明である。このlncRNAは申請者らの手による次世代シークエンサー解析と網羅的siRNAスクリーニングによって、中心体・紡錘体極近傍で機能するlncRNAとして同定され、その発現抑制によって紡錘体形成と染色体分配に深刻な異常が生じることが課題申請時に判明している。 本課題においては(1) CENNA1発現抑制時の表現型の詳細な解析、及び(2) CENNA1の作用機構の解析、の二つに焦点を絞った解析を計画・実行中である。前者としては、複数のsiRNAやantisense oligoを用いた表現型の観察を癌細胞・通常細胞含めた複数の細胞株を用いて実行中である。これまでの紡錘体張力の定量化・冷温刺激時の微小管/キネトコア結合の変化などの観察の結果は、CENNA1が微小管・キネトコア結合に影響していることを示唆している。後者としては、RNA-FISH及びMS2標識による局在の検討を行い、その結果と併せて結合相手のタンパク質の同定、及びその作用モデルの推定を目標としている。現時点で再現性の高いIF/RNA-FISHの系を立ち上げることに成功し、CENNA1が分裂中の微小管及びキネトコア近傍に局在すると言う興味深い結果を得ている。mRNA型のlncRNAが紡錘体形成をキネトコア近傍で制御するという結果が事実であれば驚きであり、本研究の進展によって新たなlncRNAの機能が明らかになると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度での最大の進展としては、前述したように再現性の高いIF/RNA-FISHプロトコルの確立に成功したことが挙げられる。これによって超解像法を用いてのRNA分子とタンパク質の局在の観察を同時に行うことが可能になり、同時に各種RNAiによるRNA分子の局在変化なども詳細に観察できるようになった。現在は解析の途中段階であるが、分裂中のスピンドル微小管のプラス端やキネトコア構造にCENNA1分子が局在する可能性が高いと推察される。即ち、CENNA1の予想される作用点と分子の局在は一致しており、このlncRNAが核内での転写調節ではなく、よりダイレクトに、キネトコア近傍で局所的に機能することを強く示唆する結果となった。 また、詳細な表現型解析や免疫沈降などを用いた解析も順調に進展している。その結果、実験調書提出段階でCENNA1の主たるターゲットとして想定していたSPDL1やRZZ複合体といったouter kinetochore構成因子よりも、さらに外側に位置するdynein/dynactin複合体やCENPEといったモータータンパク質、及びCLIP170等の微小管結合タンパク質の局在に対して影響を及ぼすことが判明しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在、前述の通りRNA-FISH法を用いた超解像顕微鏡による微細な局在の観察や、RNAiによる局在変化の観察を行っているところである。層状構造であるキネトコアにおけるCENNA1分子の局在の位置が判明し、かつその位置を維持するのに必要なコンポーネントが明らかになれば、CENNA1の分子的機能にさらに迫ることができると期待される。また、その位置関係とCENNA1抑制時の形質との関係性も追及し、CENNA1発現抑制がなぜこのような表現型をもたらすのか、論理的に破綻のないモデルを提唱したい。これらの結果をまとめ、早期に論文を投稿・掲載を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
IF/RNA-FISHプロトコルの改善により、高価なメーカー製の専用試薬を節約することに成功したため、初年度に強く傾斜をかけて配分していた予算に余裕が生じることとなった。また、学会発表・論文投稿に関しては持ち越しとなったため、これらの予算も次年度に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿までにIF/RNA-FISH実験自体の回転数を上げる必要があるため、繰り越し分の主に予算はFISH及び細胞培養関連の試薬購入費に充当する予定である。また、平成29年度は論文投稿及び複数の学会での口頭発表を予定しているため、投稿料や旅費への分配も予定している。
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