本研究課題「染色体分配を制御するヒト新規long non-coding RNAの解析」の目的は、ヒトの紡錘体形成及び染色体分配を制御する新規long non-coding RNA(lncRNA)、CENNA1の分子機構の解明である。このlncRNAは採用者らの手による次世代シークエンサー解析と網羅的siRNAスクリーニングによって中心体・紡錘体極近傍で機能するlncRNAの一つとして同定されたものであり、その発現抑制で著しい染色体分配異常を生じる。 本課題においては(1) CENNA1発現抑制時の表現型の詳細な解析、及び(2) CENNA1の作用機構の解析、の二つに焦点を絞った解析を計画し、これまでにCENNA1が微小管・キネトコア近傍に局在し、その結合に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。最終年度においてはその分子メカニズムの解明に集中し、発現抑制時に観察される紡錘体形成及び染色体分配異常の最大の原因が微小管結合タンパク質CLIP170のキネトコア-微小管結合部位からの脱落にあること、さらにCENNA1がCLIP170分子の活性化を直接調節している可能性があることを突き止めた。 研究期間全体を通じた大きな成果・意義としては、染色体分配という生命にとって重要な現象に必須なlncRNAを同定・解析したことが挙げられる。ここ数年で多くのlncRNAの機能が明らかになりつつあるが、特定の発生時期や組織で比較的マイルドに作用するものが大半である。その意味でこのCENNA1の解析は非常に独創的であると同時に、未だ機能不明のlncRNAの解析を行う上で参考となる新たな作用モデルを提供するものと期待している。現在これまでの結果をまとめて、論文を投稿中である。
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