研究課題/領域番号 |
16K18499
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田所 高志 北海道大学, 薬学研究院, 特任助教 (10762396)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 免疫受容体 / 相互作用 / 結晶構造解析 / NKRP1A / 表面プラズモン共鳴 |
研究実績の概要 |
1.構造解析に適したNKRP1Aの調製法の確立 立体構造解析をするには十分な量の組換えNKRP1A蛋白質が調製できていなかった。リガンドであるLLT1結晶構造を用いて構築したNKRP1A-LLT1複合体モデル構造に基づいた変異体作製を行うことでこれを打開することとした。変異箇所は相互作用に影響がないと予想される位置でかつ安定に調製できることが報告されているマウス由来Nkrp1と保存性の低い部位を選択しマウス型となるような変異を導入した。これまでに作製した全てのNKRP1A変異体で封入体発現量が野生型に比べて向上し、いくつかの変異体ではゲルろ過クロマトグラフィーにより巻き戻りが野生型に比べて向上したことが分かってきた。しかし、収量が立体構造解析に十分な量に達していないため更に種々の調製方法や条件の検討を行った。巻き戻しの条件やゲル濾過クロマトグラフィーの条件を丹念に検討することで収量に改善が見られる変異体が明らかになってきている。
2.NKRP1AとリガンドLLT1の網羅的な相互作用解析 NKRP1AとLLT1の相互作用解析については、安定なLLT1の変異体と哺乳細胞発現系により粗精製したNKRP1Aを用いた表面プラズモン共鳴法による解析手法が既に確立されている。新たに構築したNKRP1A-LLT1複合体モデルを詳細に調べると、従来提唱された相互作用面とは異なる領域が関与していることが推察されたため、本モデルに基づいた相互作用面に対して新たに変異体を作製し、相互作用解析を進めた。いくつかのNKRP1A変異体とLLT1変異体の組合せを用いた相互作用解析により、両者の相互作用に関与するアミノ酸残基が明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NKRP1A-LLT1複合体モデルとマウス由来Nkrp1の配列を比較し、マウス型への変異をいくつか導入した。組換え体の発現量が増加し、わずかながらも巻き戻された画分が認められた変異体について、丹念に巻き戻し条件、精製条件の検討を行った。その結果、いくつかの変異体で巻き戻り効率が初期の条件下に比べて大幅に改善した条件が見つかってきた。現在、巻き戻りが改善したNKRP1A変異体を中心に確立した条件にて調製を進めており、LLT1との相互作用を表面プラズモン共鳴法により確認しているところである。相互作用が確認できたらLLT1との複合体の結晶化へと進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度における丹念な変異導入や巻き戻し・精製条件の検討により野生型に比べて巻き戻り効率が大幅に改善した変異体や条件が明らかになりつつある。結晶化に向けた大量調製の方法をほぼ確立することができたため、当初の予定に従い、この変異体を中心に結晶化を進める。複合体構造の決定が最終目標であるので、精製過程で複合体を得るために、すでに単体で結晶化に成功している性質のよいLLT1蛋白質の存在下で、NKRP1A変異体を一緒に巻き戻して、複合体として精製、結晶化できるか試行する。 また、結晶化に十分な量のNKRP1A変異体蛋白質の調製が困難な場合を想定し、NMR測定も視野に入れて実験を進めていく。NMR測定は網羅的な相互作用解析にもつながると期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究に必要な試薬や機器・装置類の多くが所属研究室が既に所有していたもので補うことができたため。また、研究の途上であることから学会発表や論文発表には十分な成果がなく、これらのための経費を使用することがなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、結晶化の試行と放射光施設での実験を計画しており、これらの実験に必要な試薬・物品の購入費用や出張費として使用することを計画している。最終的には本研究の成果を学会や論文にて発表することを目指しており、これらに経費を使用することも計画している。
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