研究課題/領域番号 |
16K18503
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森本 大智 京都大学, 工学研究科, 助教 (40746616)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポリユビキチン / 構造ゆらぎ |
研究実績の概要 |
(1)モノユビキチンとポリユビキチン鎖とのダイナミクスの差異 モノユビキチンは、構造的に強固で立体構造ゆらぎもほとんど無く、線維形成もしない。一方、ミリ秒からマイクロ秒オーダーのダイナミクスを追跡することが可能なNMR緩和分散実験でダイユビキチンを調べたところ、モノユビキチンには存在しない構造ゆらぎを検出することが出来た。興味深いことに、構造ゆらぎは、ダイユビキチンにおけるユビキチンユニット界面に観測されただけでなく、立体構造上で界面から離れた部分においても構造ゆらぎが観測された。これは、構造的に強固なモノユビキチンがペプチド結合で二重合体を形成すると、分子運動に制限が掛かり、構造ゆらぎが生じることを示唆している。 (2)ポリユビキチン鎖のユビキチン結合タンパク質による認識 ポリユビキチン鎖はリンケージタイプによって、結合タンパク質によって認識される様式は異なる。HOIL-1LのNZFドメインはM1リンクのポリユビキチン鎖を特異的に認識することが報告されているが、溶液中における認識機構は未だ不明な点が多い。そこで本年度、遊離状態ならびにM1リンクダイユビキチン結合状態のHOIL-1L NZFドメインの主鎖ならびに側鎖のNMRシグナルの帰属を行ない、国際学術論文に発表した(Biomol. NMR Assign. 2018)。この結果はHOIL-1L NZFドメインのM1リンクポリユビキチン鎖の認識機構を解析する上で有用な知見になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に遂行できており、ポリユビキチン鎖の構造ゆらぎに関して興味深い知見が得られ、現在学術論文の投稿準備中である。ポリユビキチン鎖に関する動的な構造学的研究は未だ発展途上であり、本研究で明らかになった基礎的な知見はポリユビキチン鎖の認識や線維化を理解する上で重要であると考える。一方、ポリユビキチン線維の固体NMR構造解析については、適切な線維試料調製方法が見つけられておらず、再検討を行なっている。均一な試料調製に注力し、構造解析に最適な条件を探索している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中にポリユビキチン鎖の構造ゆらぎに関する研究結果は学術論文にまとめ発表する予定である。固体NMRによる線維構造解析は、大阪大学との共同研究によって進める予定である。試料調製の条件検討に取り組んでおり、試料調製とNMR測定を繰り返し、構造解析に最適な条件を探索する。固体NMRによる構造解析が困難である場合は、線維化に伴う構造変化をレオロジーNMRで追跡することに試み、線維化に関する構造学的情報を取得したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
安定同位体試薬が当初の計画より安価に入手することができたため。次年度は安定同位体試薬をはじめ、NMR測定のためのタンパク質試料を調製するための試薬の購入に使用する予定である。
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