研究課題/領域番号 |
16K18505
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古板 恭子 大阪大学, たんぱく質研究所, 特任助教 (30727665)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 溶液NMR / フロリゲン / タンパク質複合体 |
研究実績の概要 |
フロリゲンは花成を誘導する植物ホルモンとして同定されたタンパク質である。フロリゲンは受容体14-3-3及び転写因子FDとともにフロリゲン活性化複合体(FAC)を形成し、花芽形成遺伝子を発現させて花成を誘導する。近年、フロリゲンはFD以外の転写因子とFAC様複合体を形成することで、花成以外にも様々な光周性の反応を制御することが明らかになりつつある。本研究では、FACを形成するタンパク質の構造特性を明らかにし、フロリゲンの機能多様性への理解を深めるために、溶液NMR法による高分子量タンパク質解析法を開発するとともに、分子量およそ11万のFACの立体構造解析を目指している。 平成28年度には、FAC構成因子のうち、分子量およそ5.5万の14-3-3の解析を進めた。14-3-3は分子量およそ5.5万と高分子量であるものの、重水素標識および高分子量タンパク質で感度の良いTROSY法を用いることで、NMR信号が観測できることが分かった。そこで、これらの手法を用い、主鎖化学シフトの帰属に必要な一連の3次元NMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルを用い、主鎖化学シフトの帰属を実施したが、高分子量であるために信号の消失や重なりが多く、帰属率及び帰属の精度が不十分であった。そこで、帰属をさらに進めるためにアミノ酸選択標識法の利用を試みた。計7種類のアミノ酸について選択標識サンプルを作成し、主鎖アミド基のスペクトルを測定し、これらを用いてさらに帰属を行った。その結果、78%の主鎖信号の帰属を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、溶液NMR法による高分子量タンパク質の解析法を開発するとともに、分子量11万のFACの立体構造解析を目指している。平成28年度には、FAC構成因子のうち、分子量5.5万のフロリゲン受容体の解析に集中した。フロリゲン受容体はそれだけでも高分子量であるため解析が困難であり、平成28年度中には構造情報を得るには至らなかった。しかしながら、アミノ酸選択標識体の活用という工夫をすることで、大部分の主鎖帰属を達成することができ、今後の解析を進めるに当たっての足掛かりを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は溶液NMR法による高分子量タンパク質の解析法を開発し、それをフロリゲン受容体に適用することでさらにフロリゲン受容体の解析を進める。また、FACが安定に存在する条件を検討し、FACについて構造情報の取得を試みる予定である。
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