研究実績の概要 |
フロリゲンは花成を誘導する植物ホルモンとして同定されたタンパク質である。フロリゲンは受容体14-3-3及び転写因子FDとともにフロリゲン活性化複合体(FAC)を形成し、花芽形成遺伝子を発現させて花成を誘導する。近年、フロリゲンはFD以外の転写因子とFAC様複合体を形成することで、花成以外にも様々な光周性の反応を制御することが明らかになりつつある。本研究では、FACを形成するタンパク質の構造特性を明らかにし、フロリゲン機能多様性への理解を深めるために、溶液NMR法を用いた高分子量タンパク質解析法を開発するとともに、分子量およそ11万のFACの構造研究に取り組んだ。 まずFAC複合体構成因子のうち、14-3-3の解析を行なった。14-3-3は分子量5.5万と溶液NMR法で解析するには非常に高分子量である。高分子量タンパク質は信号数が多いため、NMRスペクトルが複雑化する。そこで本研究では、アミノ酸選択的13C,15N標識サンプルを用い、13Cで編集することで高い選択性でアミノ酸選択的1H-15N相関スペクトルを得る測定法を開発した。この測定法を利用することで14-3-3の80.1%の主鎖帰属を達成することができた。また、アミノ酸選択的13C,15N標識14-3-3サンプルのHSQC、HCCH-TOCSY、13C-NOESYスペクトルを測定し、側鎖の情報も得た。次にフロリゲンの解析を行った。フロリゲンは分子量2万と比較的小型であるものの、あまり良好なNMRスペクトルが得られず、常法では構造決定が困難であった。そこで常磁性緩和促進(PRE)を利用した構造決定法を用い、フロリゲンの立体構造を決定した。さらに、FAC-DNA4者複合体のサンプルを調製し、中性子散乱の測定を行ない、FACの分子形状に関する情報を得た。
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